第7話 新居到着
あいも変わらず手配が行き届いているところは、さすが
「レイモンド卿には、こちらで過ごしてもらいます。」
さてさて、オレはいつから諸侯になったのだろうか?
「ご主人さま、参りましょう。」
ゲイル…もといメイド服に身を包んだ
陽が昇ってから驚くことばかりだ。
まずは
「改めまして、
魔王妃殿下と王女殿下双方の命を受け、貴方様の側仕えを務めるものです。
末永くお傍に置いて頂きたく、よろしくお願いします。」
メイド服に身を包んだアビゲイルは、麗しい令嬢ではないかと思うほどの気品と所作を持ってオレを圧倒する。
そして人間界での身分の保証と住まいの手配。
どうやらアイリスは次善策を持っていたのではないかと考えてしまう。
そして、この状況に目を瞑るものが居る…誰かは分からないが、今はその好意に甘えるしかない。
◇ ◇ ◇
邸宅に入ると、必要最低限の家具と家財が据えられていた。
「とりあえず、衣類などの日用品を揃えましょう。」
「それと食料品の買い出しもな。
行こうか、アビー。」
「ええ。」
はにかむ笑顔の
辺境の街は
「楽しそうですね、旦那様。」
笑顔で語りかけるアビー。
「今まで通りでいいよ、ゲイル…いや、アビー。
これからも世話になるからな。」
「はいっ!」
手を胸の前に組み、はにかむアビー。
そしてオレたちは買い物に向かうのだった。
人が行き交う雑踏に、掛け合いの声で賑わう露店に、人々が生活しているこの街に…。
もはや、オレたちに『隠蔽』の魔法は要らない。
オレたちはあるがままで生きて行くのだ。
◇ ◇ ◇
寝室、オレのベッドから…。
「だからって、一緒に寝ることはないんだぞぉ~、アビーっ!」
月に照らされた寝室、オレがベッドに倒れ込むと、何故かアビーまで倒れ込んでくる。
「大丈夫です。
夜伽の命も含まれております。」
ゾクゾクするような淫靡なネグリジェ姿で、上目遣いのアビーがオレに擦り寄ってくる。
「いやいや、そんな事したらメイヒルに怒られて…。」
「ですから、変な虫が付かぬように、私が厳選されたのです。」
アビーはオレの両手を掴み、さらに顔を寄せてくる。
「あのぉ~これ以上は、オレの貞操の危機が…。」
「王女殿下からは、レイの甲斐性をもっと持たせるように厳命されています。
ですから、せめて私を受け入れて頂かないと、私の立場が…。」
大粒の涙がポロポロと流れ出しているアビー。
「分かったよ。
でも、今日は勘弁な。」
何とかアビーを引きはがすと、彼女はベッドに寝転がる。
「では、添い寝だけ…。」
食い下がるアビーに、渋々オレは折れた。
「じゃぁ、寝るとしようか。」
「はいっ!」
改めてベッドに入り直すと、そそくさと潜り込んでくる満面笑顔のアビー。
明日以降のことを考えると、今夜は眠れそうにないオレだった。
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