第3話 夫婦 ~メイヒル 視点~
「レイよ、此度の調停大儀であった。
これで、西部地区も少しは穏やかになるであろう。」
玉座に座り、
私も
「有難きお言葉っ!」
そう言って、頭を垂れる隻腕の騎士こそ、私の夫である『レオナルド岸和田』、『レイ』。
今回も領地紛争で揉めていた二つの伯爵家の調停を行った上、法国への手土産まで持って帰ってきたのです。
(
見込んだ通り、私の夫は世界一ね。)
私は心のなかでガッツポーズを決めるのでした。
レイが私の
はじめこそ私の傍で、法国について勉強しておりました。
…が、覚えが良いのでしょうか、あっという間に私の知識量を超え、
「まぁ、オレって才能あるから。」
とトボケてみせます。
本人は、『鑑定』と『話術』のスキルのお陰だと言ってはいますが、実は相当の努力家です。
まったく、あの知識の吸収量はどこから来るのでしょうか?
夫のこととは言え、頭の中を覗いてみたくなります。
また算術にめっぽう強く、もはや法国内で夫に敵う学者もいません。
恐らくなのですが、彼は算術のように話しを組み立てた上で、交渉に臨んでいるのでしょう。
…対戦相手が論破されていくさまを想像すると、私は吹き出しそうになります。
実は一度だけ見たことあるんです…
さて、謁見も無事に終わり、私達は揃って私寝室に戻ることにしました。
「はぁ~、終わった終わった。」
夫はゆったりとした足取りで、私を伴って歩いています。
「お疲れ様でした、あなた。
調停は紛糾したでしょうに、よくまとめられましたわね。」
「あ…ああ、まぁ、うまくいったねぇ…うん。」
歯切れの悪い夫の顔を覗き込むと、妙に汗まみれの夫の顔。
この顔は何かをヤラカシタ証だ。
これは、絞め上げてゲロさせないといけません。
私の楽しみが一つ増えました。
私の笑顔を見て、さらに顔色が悪くなる夫でした。
◇ ◇ ◇
コホッ…コホッ
何かの病なのでしょうか、体調の優れない私…。
「大丈夫かい?」
夫が寄り添って問いかけてきます。
「ええ、問題ありません。」
ある日の午後のことです、二人の私寝室でお茶を楽しみながら、会話をしていた席で咳き込んでしまった為、夫が不安を感じたのでしょう。
「ちょっと、
「え…ええ。」
夫の勧めもあり、
まぁ、この体調不良を感じた時に、すぐに
そうですね、折角ですから夫と一緒に
「では、伺いましょう。」
夫は笑みを浮かべると、
程なくすると慌ただしい足音とともに、夫と
さて、私の話を穏やかな表情で聞いている
何だかオロオロしている、夫と
「メイ、おめでとう。
待望の懐妊です。」
「「!!!」」
「300年ぶりの王族の懐妊です。
これは、嬉しい知らせですよ、あ・な・た。」
「う…うん、うん。」
「さ…さ…300…えっ?」
「私、
夫の顔から血の気が引いていきました。
(全く、失礼な夫よね、後でお仕置きが必要かしら?)
と一人不貞腐れる私でした…勿論、表向きは満面の笑顔よ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます