第18話 転生者は図書館に行く
ルナと正座してイチャイチャしてから、次の日。私は街に出ていた。
「なんか楽しいことないかなー」
一人で街を出歩ているがつまんない……とりあえず外に出たがけど、やりたいことがないし、何があるのか分からない。ルナはまだ体調悪いしね。
こんなことなら二日目のデートのときにお母さんに頼まれたものをやるんじゃなかった。
「あなた、何やっているの?」
そう思って歩いていると声をかけられる。あっソフィアさんだ。
「どうも。買い物……というか暇だからぶらついています」
「あなたね……この辺では結構犯罪が起きるのよ?」
ソフィアさんは呆れたように注意してくる。一応私のことを心配してくれているようだ。魔物けしかけてきたけど。
「そうですか? でも魔物に追いかけられるよりはマシなんじゃないですか?」
「あなた、分かってないわね。女の子が捕まったらホントにヤバいことになるわよ? それこそ魔物なんて目じゃないぐらいよ」
ホントに心配してくれているようだ。魔物けしかけたって言ってもダメだ。ソフィアさんの鋼の心には皮肉なんて言っても無駄みたいだ。
「ちなみにソフィアさんは何してるんですか?」
「見てわからない?」
質問に質問で返される……まあ、いいけどね。
改めてソフィアさんを見る。春らしいおしゃれな服を纏った姿はこれから写真撮影をするの? ってぐらい綺麗だ。
「お仕事とか? それとも喫茶店とかでおしゃれに過ごそうとか?」
「迷子よ」
…………。
まるでちゃぶ台をひっくり返されたようなハシゴを急に外された感じだ。よく恥ずかし気もなく言えますね?
「人生の回り道っていうのかしら。まあ、そういうのも大事よね? 一本道って退屈だし」
迷子の理由にずいぶん壮大にしたな……ただゴールが決まってないなら回り道じゃなくて、ただの迷子です。
「そうなんですか……じゃあ」
「あなた、話を聞いていなかったの? この辺は知らないで歩くと危ないのよ?」
「えっと……」
「だから私と一緒に行って、図書館に連れて行ってもらえないかしら」
目的地ちゃんとしているじゃないですか!? しかも私、知らないのに案内させるってどういうことですか!
なんとか地図を読み、人に話しかけて同じところに戻っては進んでを繰り返して三十分。なんとか目的の図書館に着いた。
「やっと着いたわね。サクラに会う前は一時間近く迷ってたけど着けてよかったわ。ありがとう」
「……良かったです」
さっき地図を見たら十五分で着くって書いてあったけど……知らなくていいことってあるよね。
図書館に入ると各々好きな本を読んでいた。私は雑誌とか読んでいたけど正直ファッションのことなんて分からない。と言うか見てもうちの村にはないので見ても無駄だった。
すぐに飽きてしまった私はソフィアさんを探すと……すぐにいた。どうやら転生者の本を読んでいるようだ。
「転生者の話が好きなんですね」
「そうね。やっぱり転生者は良くも悪くも色々な影響を与えているわ。ほとんどが女神様から力をもらっているらしいけど、その力はなぜ転生者だけに与えられるのか……それについて興味があるのよ」
「なるほど」
確かにそうだ……そんな力が転生特典で与えられるなんて現地人からしたらなんて羨ましいだろう。現地人じゃない私も羨ましいけど。
「だってそんな人たちに力をあげるより、騎士見習いとか学生にあげた方が効率いいもの」
あっそっちですか……確かにそうですけど。
「ホント、戦い慣れてないのだからいきなり戦場に行っても使えないはずよ……もしくは使える者だけを厳選しているのかしら? 謎は深まるわね」
……ごもっともな指摘だ。きっと厳選してるんだと思いますよ? ……私? 私だって厳選されるんだ。きっと。未来に期待ということで。
「まっまあ、その中でも活躍できている人がいるのでやっぱり厳選しているんじゃないですか? 知りませんけど」
そう……ゆとり世代だろうと活躍する人はいるんし、転生してもダメな人はいるんです……わっ私とか……私とか。
「そうよね。ルナのように戦える者だけに厳選しているわよね。……使えないのを転生させても意味ないもの……ってなに泣いているの?」
「いえ、なっなんでもないです」
トドメを刺された気分だ。私は泣きそうになりながらもなんとか耐えているともう興味を無くしたのかソフィアが本を閉じる。
「そ? まあ、いいわ。ともかく転生者はそれだけ貴重ってことよ。ルナのように素手の力が強いなんて稀だもの。いるならもっと会ってみたいわ」
身近にいます……なんて言えない。だって私は使えない、意味ない転生者。
楽しそうに語るソフィアさんがヒーローに憧れる少女のようでそんな顔できるんだと思うくらいにかわいかった。
その後も図書館で本を読んだり、ソフィアさんにダル絡みをしていたが、結局ソフィアさんの人柄はほとんど分からなかった。フェイのようにいい子ではなく、ミユちゃんのように子供かと思ったら頼りになる天才ということもなかった。ほんとに謎だ。
二人で帰路につきながら、無言で歩いていく。
「今日はありがとう、サクラ。楽しかったわ」
「あっソフィアさん、お礼は言えるんですね」
「……あなた私のことをなんと思っているの?」
「よく言えばミステリーガールですね」
「そう。ちなみに悪く言うと?」
「魔物をけしかける人の心がない、マイペースな人ですかね」
「……」
ソフィアさんがいじけてる。あっ人間の心持っていた。
口を尖らせる仕草はかわいくてずっと見ていたかったけど、また魔物をけしかけられたらほんとにキツイので、機嫌を直してもらうべく全力でヨイショしながら帰った。
ソフィアさん、結構女々しいです!
宿に帰ると――。
「あっルナ、ただいま。もう大丈夫そう?」
「おかげさまで」
そう笑うルナはかなり良くなっている。今日しっかり寝れば大丈夫そうだ。
「今日は何をしていたの?」
「ああ、ソフィアさんと図書館に……行きました」
なんかまた浮気を疑われている夫のような感じがしている。正座したほうがいいかな?
「ふーん」
っていうルナにとりあえず正座した。
別に他の女を口説こうとしているわけじゃないけど、とりあえずね。
「はい。といっても道案内をさせられたり、本とってきてってパシリにさせられていたけど」
「あっうん。そっか」
何とも言えない空気になりながら私達が見つめ合っていると一枚の手紙が届く。どうやらお母さんからの手紙らしい。お金が届いたのかな?
私は手紙を手に取って読むけど、すぐに絶句する――。
「えっ」
「どうしたの、ルナ」
「ルナ、どうしよう? む……村が」
そこに書いてあったのは村がヤバいとのことだった。
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