第14話 転生者は二度目のデートをする

拝啓 お母さま

ご機嫌麗しゅう。あたなの愛しい娘サクラです。

最近はよい天気が続いていますが、いかがお過ごしでしょう。

さて挨拶はこのくらいにいして、ご報告があります。


しばらく家に帰れなくなりました。どうしましょう? 

なんでも魔物がたくさんいて外に出ると死ぬそうです。

なので、しばらくはルナと一緒に隣街でイチャイチャ、ラブラブ暮らそうと思っております。

定期的に新婚生活のご報告をいたしますので、心配しないでください。


お母さまはよく手伝っていてくれた愛娘がいなくなり、とってもさみしく大変かと思いますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い致します。


P.S.

ちなみに所持金がなくなってきたので、お金を送ってください。マジ頼みます。



 昨日の衛兵の話を聞いてからお母さんに手紙を書いた。後は鳩が村に送ってくれるだろう。

 これからはルナとの生活を楽しむとしよう……。

「どうしたの? サクラ、気持ち悪い顔をして」

 そう思った途端にこの暴言である……シンプルにひどい。

「なんでもない。とりあえず手紙は送っておいたから、しばらくは泊めてもらうけどいい?」

「いいよ。……ごめんね。こんなことになっちゃって。でも三日後とかには解消されそうっだって」

 なるほど……あと三日か。だったら楽しまないと損だよね。それに今日は待ちに待った二回目のデートだ。もう、テンションも限界点を突破している。そろそろルナとキスしそうだ。

「なんか気持ち悪い顔してるね……」

 冷たくあしらわれる……このテンションでも少し効いてくる。

「もう、そんなこと言って……ルナめっちゃ可愛いじゃん」

 文句を言おうと改めてルナを見るとめちゃくちゃ可愛かった。この間買った服なんか目にならない。転生者が、広めたのか彼女が着ているのは少し大きめなニットに短めのスカート。そして長めのニーハイ。帽子をかぶったその姿は原宿とかので歩いているモデルみたいだった。好き。

「この間は「可愛い格好がいいー! お願い着て着て」って駄々こねられたしね……ちゃんと可愛くしてきたよ」

「ありがとう、私のために!」

「……言葉は合っているんだけど、なんか嫌だな」

 素直にお礼を言っただけなのに……素直じゃないなー。

「いいでしょ? 私のためにかわいくしてくれたんだから……なんなら「私がプレゼントだよ」って言っているようなもんだよ」

「全く違うよ」

 ノータイムで否定しながら、ルナの支度が済んだみたいだ。

「変なこと言っていないで行くよ。待っててくれてありがとね」

「……こういうときは手をつないでいくもんだよ」

「やだ。なんかサクラと手を繋ぐと調子乗って色々してきそうだから」

 信用がなさすぎる……。私そんなに変なこと……変なことはしてなくない?

「待って、それは自意識過剰だよ。私は変なことはしていない」

「戦闘中に私の体触って、匂い嗅いでたでしょ」

「……」

「はい。行くよ」

 そんなこんなで私とルナの二度目のデートが始まった――。


「どう、結構買えた?」

「うん。ごめんね」

 デートに行ってすぐに行ったことは買い出しで、お母さんに頼まれてていた人に挨拶や物を買うのにめちゃくちゃ時間がかかった……お母さん、絶対いらない物頼んだでしょ。なんか一回目のときと同じ感じがする。もしかして私、データ下手か?

「後はどう?」

「後はね……いやこれはいいな」

 買い物メモには、「ルナちゃん♡(それかルナちゃんのエッチな写真)」」って書いてあるけど見なかったことにする。ルナはものじゃないので。

「とりあえず、大丈夫そう」

「そっか」

「ルナは行きたいところないの? 散々付き合わせちゃったし、どこへも付き合うよ。例えばホテルとか」

「そう? ……じゃあ、冒険者ギルドかな。サクラの冒険者登録をしに」

「よし、何もないようだからこのまま買い物行こっか!」

 私の冗談へのカウンターが上がっている……今日はテンションが上がっているからかルナが結構意地悪だ。

「えー行こうよ」

「ホントに勘弁してください。せっかくのデートなのに手続きに行くとか最悪だし、何より私はなりたくない!」

 そんな甘い誘惑にはかからないぞ。そんなかわいい顔をしてもダメ!

 心を強く持ちながら会話をしているとルナから提案があったところに向かうことになった。


「ここ通るの?」

「そうだよ」

 歩いていて数十分――薄暗い路地が目に入る。どう考えても怪しい。一体ルナはどこに行こうとしてるんだ? 

 先ほど場所は「秘密」と言われているので、ルナの言った通りに進むしかないんだけど……路地裏のところに入ったあたりからなんか治安の悪さを感じている。いつ「薬やんない?」って言われないかビクビクしながらついて行く。マジでどこに連れて行かれるんだろう。

 どんどん進んでいくと、さらに暗くなっていく路地が見えた。

 私が後ずさってしまうとルナが笑いかけてくる。

「何、怖い?」

「……」

 ルナはニヤリと笑い、意地悪に手を差し出す。

「手、繋いであげよっか?」

「ぜひ!」

 私は飛びつくように手を握る。

「なんか思ってた反応と違う……」

 ふふ。甘いよ、ルナ。私は女の子に触れる機会は逃さない女なのだ。少しぐらい恥があろうか触れるなら安いもんだ。

「でも、ここ抜けてどうするの? もしかして迷った?」

「うんうん。ここはショートカットになっているんだよ」

「ショートカット?」

「そう。観光スポットのね。だから、ここで観光客から騙しとってやろうと売人達が結構いるんだ」

「ホントに危ないところだった!」

 普通そんなところデートで通らなくない? 近いかも知れないけど、ちゃんと綺麗な道をエスコートしてよ! 私か弱い女の子なんですよ?


 私は文句を言いながらルナに手を引かれて暗い道を通る――そうすると。

「うわ、すっご」

 目の前には絶景が広がっていた。街全体が見渡せてところどころに噴水があって、ザ・ファンタジーって感じさせる見事な景色だった。絶対写真撮ったら映えそう。

「綺麗……」

「そうでしょ……サクラに綺麗な景色見せてもらったからね。私も私なりに絶景を見せてあげたかったんだ」

 そう言って私に笑いかけてくるルナは超可愛かった。さすが私の嫁。

「ありがとう」

「あっちは? なんか人めっちゃいるけど」

「あっちは観光スポット……ここは観光客には知られてない場所なんだ……こっちの方が良さそうじょない?」

 できる女だ……私のことをしっかりと考えてくれる。

 人気店でわざわざ並びたがる日本人だけど、私は普通に人混みに行きたくない。そんな私のような引きこもり星人の心理をちゃんと理解してくれている……天使だ。

 私が改めて最高の女としみじみ感じていると、後ろで物音がする。

 そこには男が二人――ってことは。

 私がルナの方を見るとすっごく気まずそうに。

「まあ、観光客はこういった輩がいるからここに来ない方がいいんだけど……」

「私ただの観光客なんだけど!」

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