第7話 転生者は転生特典を知る
――夢を見た。
私が美少女ハーレムを築きながら、転生特典を使って無双しまくっている夢だ。
そこでは「ふっ、手加減が難しいぜ」と言いながら爆発させても全然グロくない敵を蹂躙し、美少女を抱いている世界だ。
最強になった私にルナが微笑みかけてくる。
「サクラ! すごいです。抱いて!」
「ふっ、おいおい。そんなことをすぐ言うようじゃ品がないぜ?」
夢の中だがらか絶対に言わないことをルナが言いながらメスの顔をしてくる。めっちゃ気持ちいい。
「かっこいい! ならせめて膝枕をさせて下さい! せめてサクラのぬくもりを感じたいです!」
「ふっしょうがないな」
ルナがノリノリで膝枕をしてくれて、私がとてつもなく調子に乗りながら膝に頭を乗せる。柔らけぇ。夢なのに感覚がリアルだ……まあ、されたことないけど。
心地がいい感触に身を任せながら、これからのことを思う。なんか急に不安になってきた。
「ルナは私の側にいてくれるよね? ずっといてくれるよね?」
「はい。いますよ」
よかった。いてくれるみたいだ。こんな完璧な力を持ったのに不安になるなんて、やっぱり私は夢でも変わんないみたいだ。
「サクラがずっと冒険者でいてくれるなら、私はずっと側にいますよ?」
「え?」
突如夢が覚めていくような感覚に襲われながら私は目を覚ます――。
「あっ、サクラ。起きた?」
私が上を向くとルナの顔があった。これは夢オチ? だとしたら!
私は頭にある感触に身を委ねる――この柔らかい感触……これは、まさか夢と同じ膝枕……ッ!
私はバッて起き上がって確認するとロングスカートで隠れた足だった……なぜ。
「そこは普通生足じゃないの⁉」
「……ここまで運んで上げて、膝枕までしてあげたのに、第一声が抗議なの?」
「あっうん。ありがとう」
ここはさっきまで戦っていた細道じゃなくて、すごく景色のいい平原の木陰だった。だけどやっぱり生足は譲れない。
「もっかい! ルナはやればできる子だから! ほら早く生足で膝枕して‼」
「……」
ルナの目はとてつもなく冷たかった……でもっ、でもさ。
すごくありがとうなんだけど、ありがたいんだけど……だけどやっぱ生足が良かったです。
「あれ、体がだるい」
私は少し立ちくらみがして、元いた場所に戻る。
「あんなこと言ったのに、まだ私に膝枕をさせるの?」
鬼のようなオーラを発してくるルナがマジで怖い。
「いや、ホント立ちくらみがしたんだって」
「はあー」
ため息をつきながら、でもなんだかんだでやってくれるルナに感謝しながら、私は改めて夢じゃなくてさっきのことを思い出す。
木を薙ぎ倒していた猪、それに突っ込まれそうになってルナにおんぶされた私。そこにいい匂いと柔らかな感触が……。
「あっ! ルナの胸触らせてよ!」
「は?」
すっごい低い声……そんな怖い声出さなくてもいいじゃん。もうかわいい女の子じゃなくてただのチンピラみたいだよ。
「だって、さっき戦闘で硬くないって……なんでもないです。すいません」
圧がすごいよ、圧が。あと拳は握らないでください、思わず敬語になっちゃうから……おかしい、かなりの友好関係は築いていたはずなのに。
なぜか空気が悪くなったので、話を変える。
「それはともかくさ。……ここ村の外だよね。危なくないの?」
ルナは一瞥しただけで、外に視線を向けて真面目に話してくれる。どうやら許されたようだ。
「うんうん。さっきのところだけだったみたい……ていうかこんなところで魔物に出くわすなんて普通ないよ」
「運が悪かったってこと?」
「……そうだね。最近魔物が大量に発生しているからここにも影響が出ているのかも」
流石は冒険者。最近の魔物事情にも詳しいようだ……というか魔物のせいでうちの村に来たんだもんね、知っていて当然か。
なんか膝枕っていうラッキー体験を得られたのに、命の危機に陥るという運のつり合いが全く取れていない……ホントに私は不憫かもしれない。
「マジか……」
「マジだよ。ほんとお互いに生きてて良かったよ」
それもこれもルナのおかげだ……だってあの魔物をパンチしたら爆発するんだよ? もう絶対ルナを怒らせちゃいけないどころか今後敬語で行きそうな勢いだよ。
私は膝枕されながら、ルナをほめる。接待だ。
「でもルナってホントに強いよね」
「え?」
「だってあの猪の攻撃をずっと避けていたし、それに最後一撃だったじゃん……まあ私は思いっきりお荷物だっただろうけど」
ルナは難しい顔をしてしまう……そんなに足手まといだった? ……だったね。
思い返してみても全然役に立ってない。石を投げただけだわ。使えない女……サクラ。
「……まあお荷物と言えばそうなんだけど」
フォローすることもなく、グサって言葉のナイフが刺さる。そうなんっすね……まあ、そうですよね。
先ほどのおちゃらけた空気を変えてルナは私に向き直る。
「……ねえ、サクラ。最後の攻撃のとき、あなたは私に何をしたの?」
「え?」
突然ルナは私にそんなことを言ってきた。
何かしたか、私。
ぶっちゃけおぶられて戦っているときは、死にたくないとかルナめっちゃいい匂いとかしか感じられてなかったし……何かしたかと聞かれたら泣き叫びながら匂い嗅いでましたとしか答えられない……いや、これは言わないほうがいいな。
「ルナって甘い匂いがしたよ」
「戦闘中に匂いを嗅ぐな‼︎」
最近ルナのあたりが強くなった気がする。
ルナは少し気になるのか自分の匂いを嗅いでいる……そんなとこらもかわいいな。しかもちよっと恥ずかしそうなのがさらにかわいい……なんか、うちなる変態おじさんが出てきそうだ。
「大丈夫。今もいい匂いだよ」
「そういうのいいから! しかも顔を反対に向けようにしないで!」
ルナ側に顔を向けようとしたら本気で嫌がられた。残念。
「まったく……私はそういうことを言っているじゃなくて、最後なぜ私が魔力を使えたかを聞きたいの」
「え、なになに? ついに私のすごい才能が花開いちゃった!?」
「すごい才能って……」
ルナは呆れているけど、私からしたら一大事だ!
どうしよう? 魔力がありすぎるとか! 「ふっ、手加減が難しいから動かないでくれ」とかそんなこと言えたりするのかな!
「才能には違いないと思うんだけど……」
なんかルナが答えにくそうにしている……そんな言語化しづらい能力なのかな? それとも凄すぎて言っていいか分かんないのかな?
「それでそれで?」
私は新しいおもちゃを買ってくれた子供のように目をキラキラさせながらルナの言葉を待つ……なんか私、犬みたいだ。
「うーん」
「はやくはやく」
さらに催促するが、ルナはまだまとまっていないのか、なんともバツが悪そうだ。
「うーん。私って魔力が全然なくてマナタイトがないと魔法って発動できないんだ」
「何言っているの? 早く私の魔法を教えてよ、今はルナの話なんてどうでもいいいよ」
いきなり話を変えられて不機嫌になる。お座りをさせられて、目の前でご飯を預けられている気分だ、やっぱり私は犬かもしれない。
「今整理しているから……で、そんな私でも魔法を発動することができた」
「うん」
ルナは明後日の方向を見ながら私の能力を推理する。
「多分あれはルナの魔力を使ったんだと思うんだ……となるとルナは魔力を譲渡できるんだよ」
ほうほう。
「え、つまり?」
「自身の魔力を譲渡できる魔法……すごくわかりやすく言うと電池かな?」
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