第7話
しかしその機会は参りませんでした。
はじめの十日ほどはお忙しいのでしょうと堪え、次の十日はお加減が悪いのではと案じ、次の十日はわたくしに愛想を尽かされたのではと不安になりました。
そんな折、祖父に呼ばれます。
「小夜」
「はい、お祖父様」
「おほん。天童くんとの縁談だが破談になった」
「は……だん?」
頭の中で漢字に変換されるより先に、頬に涙が伝います。
やはり、わたくしに愛想を尽かされたのですね。
あまりに子どもなわたくしに天童さまは渋々付き合ってくださっていたのでしょう。
初めに『なかったことに』とおっしゃられたのは天童さまです。ずっと
「小夜?」
「しょ、……承知いたしました」
「理由は聞かぬのか?」
「分かっております」
頭を下げて退室すれば、涙が更に溢れます。袖で隠しても、袖は重くなるばかり。
「て、んどーさ、ま……」
もうお会いすることも出来ないのでしょうか?
紅のお礼さえ申し上げていないというのに。
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