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「……創世の時代より、楽園を捨てて堕天する者たちは後を絶たない。神に叛逆した、かの明けの明星を筆頭に、人間の女に魅了され、情欲のうちに地に降臨したアザゼルほか二百名のような話は、数えきれない。……ことに我々、最も下位に属する者たち、人間と人間の世を直に見守る者たちはとくに、約束された永遠の生を放棄して、死すべき人間のあいだで暮らすことを選ぶ者が増えている。……星々よりも、人間たちの窓の灯をよりいとおしく、近しく思うのだろうか。君も、そちらを選ぶのか。……」


 高い、高いところにいる。東京タワーも、新宿西口の高層ビル群も、遥か眼下に小さく霞んでいるほど、高い。

 歓声が聞こえている。観客の、姿は見えないが、こちらの名前を呼ぶ声だけはひっきりなしに届く。ギターも鳴っている。ライヴの最中で、気持ちよく歌っているのだった。

 ステージは透明なアクリル板ででも出来ているのか、まるで空中に浮いているようだけれど、呼ばれるままに前へ出る。怖くはなかった。

 いざとなったら、飛べばいい。

 呼ぶ声は止まない。演奏も激しさを増す。前へ、前へ、とゆくうちに唐突にステージがなくなって、宙に放り出された。

 ――途端にすべてが暗転し、どこまでも落ちていった。

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