第76話 レッツゴー冒険者②

「――――よかったあ! それじゃあ、トウヤさんは2級冒険者として推薦しておきますね!」


 ヴァラスは手を一回叩き、一体いつ用意されたのか分からない用紙らしき物にサラサラと記入を始めた。


「2級......ってどれくらいの立ち位置なんですか?」


 強さのランク分けに興味がある訳じゃないが、言われたら気になるよね。


「等級は下から5、4、3、準2、2、準1、1......そして特級の順に高くなります。私からの推薦というのもありますが、かなり高い方だと思いますよ?」


「トウヤ様は森の主や破壊者の件でヴァラス様に大変評価されています。ありがたく受け取りなさい」


 なんで補足のフェルメアさんがちょっと誇らしげなんだ?


「――――いくつか聞きたい事があるんですが......」


「なんでしょうか?」


「ルーク達も推薦されているんですか?」


「ええ、勿論!」


 やっぱり! これで俺より等級上だったら腹立つ!!


「ルークとライは何級なんだ?」


「チッ......俺は準2級だ」


「ジブンも準2級ですよぉ旦那ァ」


 ルークは嫌そうに、ライはいつものふわっとした感じで答えてくれた。


「へっ......そうかよ......じゃあ今度から俺の事は敬ってくれよな!」


 なんてったって、俺の方が等級が上なのだから!


「そーいう反応するから言いたくなかったんだよ壊し屋テメェ......!!!!」


「ジブンは普段から旦那の事は尊敬してますよぉ」


「冗談だって!――――それで、ガリアは何級なんだ?」


 ガリアは局長なんだから部下の二人よりは高いとして......2級か準1級辺りか?


 ガリアは待ってましたとばかりに豪快に笑い、俺に等級の書かれている“ギルドカード”なる物を見せつけてきた。


「よくぞ聞いてくれた壊し屋の......俺は1級だ! ガッハッハ!!」


「な......なにぃぃぃぃ!!? お前が1級ゥ!?」


 いや、ガリアはルークとライの上司......弱くはないんだろうし妥当......いやにしてもスゴすぎるだろ!?


「ガリアさんは象徴アトリを持っていますからね......あと、ご本人のメンツと言うか……」


 俺達のやり取りを眺めていたヴァラスが、コッソリと教えてくれた。


「――――そういう訳だ壊し屋の! まぁ象徴アトリはいつ覚醒してもおかしくないから、お前はいつでも俺を超える準備が出来ているという訳だ! 第一、実力なら俺より遥かに高いのだからな!」


 ガリアはそう言いながら俺の背中をバシバシと叩いた。


「ねぇねぇヴァラス! それじゃあ私は何級!?」


「じゃあ我は!? 我は!?」


 プリメーラとフィンがキスするんじゃないかって位ヴァラスに顔を近づけて質問を始めた。これにはヴァラスも少し困惑の表情である。


 これが街の長に対する態度かね(俺が言えた事ではないが)


「え!? えーっとそうですね......私が推薦できる枠はトウヤさんで最後なので、プリメーラさんは5級からのスタートですかね?」


「なぁんでよぉぉぉぉぉ!!!!?」


 プリメーラは存在しない衝撃に撥ね飛ばされた。それを見てトウヤは得意気に腕を組み笑う。


「ブワッハッハ!! ま、頑張って上がってこいよ! プリメーラ!」


「笑うなトウヤ!――――っむう~......絶対トウヤより先に準1級になって見下してやるんだからね!」


 見下すってあんたね......


 そしてヴァラスは続ける。


「――――フィンさんは......まだ小さいのでそもそも冒険者になれないかと......」


「なっ!!? 我......早く大きくなりたい......」


 フィンは涙目で項垂れ、フェルメアに“よしよし”されている。


 お前、割と可愛がられるタイプだよな......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る