第74話 ファストレアのお嬢様②
「――――貴方が“壊し屋”さんのトウヤさんですね? 私の名は“ヴァラス・ファストレア”。この街の領主をさせて頂いています」
「俺の名はトウヤ! 異世界人にして壊し屋なり!」
ヴァラスの自己紹介を皮切りに、トウヤはヒーローよろしくの両手を使ったポーズを取った。
プリメーラは可愛く、フィンはかっこよく、ショクは“もにん”と、それぞれの体勢になる。
「私はプリメーラ! そこにいるトウヤの......仲間? お目付け役?......よ!」
「我の名はジバン・フィンド! トウヤの一ばんでしにしていずれさいきょうになるものだ!」
「ミ゚ッ!......ミ゚ミ゚ミ゚......スッ!!」
ふふふ......決まった......
実はこんな事もあろうかと、フィンの提案で名乗りとポーズを決めておいたのさ!!
いやぁ~プリメーラもノリノリで乗ってくれたし、ぶっつけ本番にしては良い感じにキマッたんじゃないか?
見ろ! 少女改めヴァラスなんか驚きで声も出てない――――
「馬鹿な事やってないで座れ。俺はふざける為に呼んだ訳じゃないぞ」
いつになく真面目なルークが余韻に浸っている俺の後頭部をひっぱたいた。
「でもよぉルーク......こういうのは第一印象が大事なんだぜ?」
「呆れられてんだよ馬鹿か......早く座れ」
「わかったよ......」
俺達の自己紹介を見て固まっていたヴァラスは、少ししてくすくすと笑い始めた。
「良いんですよルーク......壊し屋さんたちは、聞いていたお話以上に賑やかな方たちなのですね」
めっちゃ可愛ええ......笑顔が素敵な正統派美少女って感じだ。
ルークはガリア達と共に横へ控え、部屋は俺達壊し屋と、ヴァラスと執事風の女性との空間になった。
「――――では改めて、壊し屋の皆様。三界の破壊者という未曾有の災害からこの街を守って頂き、本当にありがとうございます」
ヴァラスの言葉に合わせて、執事の女性も一緒に深く頭を下げた。
「頭を上げてください......正直、俺達だけじゃどうしようもありませんでした」
実際、ガリアの
「本来なら、警備局員が対応すべき問題です。仮にも“警備”の名を冠する者たちが、異世界人とはいえ民間のあなた方に協力を求めるなど本来はあってはならない事なのですが」
おおっと!? 執事の人が急に喋ったと思ったら一瞬で空気に緊張感が走ったぞ!?
執事の人が眼鏡の奥で光る眼光で睨みつけた相手は......いや、相手達はか......
「んだと“フェルメア”ゴラァ......? 街のクソ緊急時に居なかった奴がよく言うぜ全くよぉ......」
「局長どうしやすかぃ......? シメますかぃ?」
「ライ......俺に振るな......今日は一言も喋らずに帰れると思ったのに......」
主にルークとライの二人が喧嘩腰のようだ。ガリアは他人事のように目をそらす。
「私の仕事はヴァラス様に付き従い、何があろうと守る事です。私は今、何故あなた方は単独で対処出来なかったのかと聞いています。そんなだから税金泥棒だの半グレだのと言われるのですよ?」
んなきっぱりと.......フェルメアさん火力が高い!
しかし、相手は火薬庫同然の男達......そんな勢いで炎のナイフを投げつけたら――――
「上等だよ今ここで決着つけてやろうじゃねぇか! テメェ自慢の
「副長......先にジブンにやらせてくだせぇ......ジブン等がこの一ヶ月遊んでたワケじゃねぇって所をみせてやります......」
お互いがそれぞれの武器を構え、広いが闘うには狭い室内で喧嘩が始まってしまった。
喧嘩になるの早すぎだろ!
「私、皆さんが仲良しでとても嬉しいです」
後ろでドンパチやっていると言うのにヴァラスは動じない。寧ろ羨ましいとばかりにころころと笑っている。
「これって仲が良いと言って良いんですか?」
「――――ですが......確かに今すべき事ではありませんよね?」
おお......威圧感の乗っかった一言と人が変わったんじゃないかと思えるくらいの厳しい表情......一瞬で喧嘩が止まった......すげぇ。
「この喧嘩には後で私も混ぜてもらうとして、本題に入りましょうか」
ヴァラスの言葉に乗った圧が、今度はこちらへと向けられた。
「本日壊し屋の皆さんをお呼びしたのには、あるお願いをさせて頂く為です」
「俺達に聞き届けられる事ならなんでも!」
その言葉で、今までの威圧感が嘘のように消え去った。そして厳しい顔は解れてまた柔らかな笑顔が戻る。
「よかったあ! それなら話は早いです......実は壊し屋さん......特にトウヤさんには、英雄になって欲しいんです!」
「......えいゆう?」
英雄って......ガリアが言ってたアレだろ? いや、言葉の意味は知っているが......俺が?
「ええええええええ!?」
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