第72話 もっと弱くなっちゃった③
親父、肉体と精神、対ジン式格闘術と闘気......よし! 段々とヒントが集まって来たような気がするぞ――――
「たっだいまー! トウヤ起きてるー!?」
「わぴゃっ!?」
何かを思い出しそうになったその時、満面の笑みと大声で俺の思考を完全にシャットアウトしたプリメーラが部屋へと入ってきた。
考えていた事がスコーン! とどこかへ飛んでいってしまった。
「スコーン!って......脳みそがスコーン!って......」
「あら? どうしたの? いつもより蒸発した?――――ってそんな事より! 聞いてよトウヤ!」
何やら昂っているプリメーラは俺の入った金魚鉢を高く持ち上げてくるくると回る......まさか!
「プリメーラ! 元の姿に戻る方法が見つかったのか!?」
「全然手がかりが無かったのよぉぉぉぉ!!!!」
「じゃあなんでそんなにテンション高いんだよぉぉぉぉ!!!! ちょっと期待しちゃったじゃん!!」
「そう! 聞いてよトウヤ! 元に戻る方法は見つからなかったけど、良い物見つけちゃったの!」
「いいもの?」
そう言うとプリメーラは、等身大の人形のような物を運び込んできた。
それは見た事の無い素材で出来ており、魔力によって鈍く発光している。
まだこれがどう良い物なのか想像がつかない。
「なにこれ」
「これはね! 簡易受肉キットって言って、その名の通り精神生命体が受肉する為の依代になってくれるの!」
プリメーラの説明は続く。
「――――簡易と言ってもその頑丈さは保証されてるわ! 見て! この外骨格なんか魔力をたっぷり吸い込んでより丈夫になった“魔鉱石”100パーセントで作られてるのよ!」
受肉というのも、俺の意識入りの闘気を簡易受肉キットに満遍なく塗り込めば問題なく完了するらしい。
「めっちゃ凄いじゃん......」
「でしょ!?」
「こんな凄い物どこで手に入れたんだ......?」
俺が素朴な疑問を零した途端、プリメーラの表情が一瞬強ばったような気がした。
「それは内緒!」
一気に胡散臭くなったぞ大丈夫か?
「我! きかんなりー!」
「ミ゚ッ!」
おっと、丁度いいタイミングでフィン達も帰ってきたようだ。アイツらの意見も聞いてみるか!
「フィン! 丁度良かった! 実はかくかくしかじかで......」
「むー......なるほどな!」
フィンとショクは俺の説明そっちのけで簡易受肉キットに目を輝かせていた。
「トウヤはこれからこれと合体するの!?」
「まぁ......ざっくり言えばそうだな」
「かっこいい! ね! ショク!」
「ミ゚ッ!」
どうやら、これ系統に心惹かれるのは異世界も元の世界も、人間も魔族も関係ないみたいだ。
「おっけい! プリメーラ! やってくれ!」
背に腹はかえられんのだ。やるしかない。
「分かったわ! 行くわよっ! せーのっ!!」
俺が受肉キットに染み込んでいくのが分かった。ここから馴染むまで暫く置いておくらしい......
――――
大体30分後! 身体が動くようになった!!
そして! 見た目は今までと一切変わらなかった!
「凄いわよトウヤ......身長体重匂いまでも全く同じ......わっ! 肌の質感まで同じだわ.....」
「スーパーおんぶモードも今までと同じ! トウヤが帰ってきた!」
「ミ゚ッ!!?」
大はしゃぎの御三方......確かに見てくれは同じだろう......だが本人的には色々と違う!
「確かに! 身体は今までと同じように動くし、対ジン式格闘術も使えるだろうけど! 代償として鍛えた肉体が無くなっちゃったよ!!」
「あ......」
これは......こればっかりはどうしようもない事なんだろうが! 俺はちょっとだけ弱くなってしまったのだ!
また鍛え直さなきゃ......
「防御面はやっぱ魔鉱石の外骨格なだけあって強くなってそうだけど、やっぱりスピードとパワーはどうしても落ちてるよなぁ......」
今は割り切るしかないか......
「あ、そうだ忘れてた! プリメーラ! フィン! ショク! 今からルークの所に行くぞ! なんか用事があるらしい!」
「「おー!」」
「ミ゚ー!」
これ以上行くのが遅れると怒られそうなので、俺達は急いでファストレア緊急警備局へと向かうのだった!
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