第二部 勇者とランクと最強への道
第70話 もっと弱くなっちゃった①
三界の破壊者と戦ってから、大体一ヶ月が過ぎた!!
俺はと言うと......
「ねぇプリメーラ......? 俺の体いつになったら元に戻るの!?」
俺は未だに液状不定形のフォルムのままだった!!
そのままにしておくと蒸発しそうで怖かったので(あと流れていきそうだったのもあって)、現在の俺は金魚鉢に密閉されている。
なんで!? ねぇなんで!?
「えーっと......今のトウヤの状態は、魔力......トウヤの場合は闘気ね。を身体の許容限界を超えて使い続けた事による、いわば“身体闘気化”状態なのよ」
「つまり?」
「今のトウヤは赤くてトロトロ~ってしてるけど、これ全部闘気! 別の人が食べると一瞬で元気になれる魔法の栄養ドリンク――――」
「嫌だァァァァァァ!! 戻してくれぇぇぇぇぇぇ!!!!」
これが“対ジン式格闘術”の反動なのかガリアの“
「一ヶ月は長いよ~! お腹減ったよぉぉぉ......」
「にしても変ねぇ~。私の見立てじゃあ二、三日で元に戻ると思ったんだけど......」
「お前の見立てが当たった事あったか?」
「ッッ.......」
あ、しょげた......
その時、俺の隣に置いてある魔法通信機が鳴り始めた。
「着信だ! プリメーラ頼む!!」
「は~い――――もしもし? 世界一の美少女プリメーラです」
よく恥ずかしげも無く言えるな......一体誰からの電話(魔話?)だろうか。
「ええ......うんうん......いるわよ?」
受話器の先で誰が話しているのかは聞こえないが、プリメーラの柔らかい口調から察するに、依頼人の類ではなく俺達の知り合いの誰かからだろう。
「トウヤ? ルークからよ。緊急の用事だって」
連絡をよこしたのはルークだったらしい。しかし緊急の用事とはなんだろうか?
「分かった......すまんプリメーラ......俺の口の辺りに受話器を置いてくれ......」
このからだ、もちろん四肢なんか無いので凄く不便だ!
プリメーラは少し悩んだ顔をしながら受話器を俺入りの金魚鉢の側へ置いた。
だが――――
「そっちは背中だ......」
「目も耳も鼻も口も無いのにややこしいわね......」
受話器が俺の口の所へずらされる。これでようやく電話に出れるという訳だ。
「はいもしもし。この街の英雄トウヤです」
『それを自分で言うのか......まぁいい。急ぎの連絡だ。すぐ来い......と言っても、戦闘関連じゃないぞ』
そう話すルークの声は酷く不機嫌で疲れているように感じた。
「いやぁ......無理だな」
この状態で行くのは無理があるよ? 傍から見れば金魚鉢に入ったトロトロらしいじゃん?
『あぁ?』
機嫌の悪そうなルークの声が、より一層の凄味を増して聞こえた。
「だって、まだ治ってねぇんだよ......」
ルークはあの場にいて今の俺を見ている。多分これで伝わっただろう。
『壊し屋テメェ......まだあのままなのかよ......分かった。戻ったら直ぐに連絡をくれ』
「なんで???」
既に嫌な予感しかしない。
『いいから、すぐだぞ』
「はァ!? だからなんで――――」
ガチャン! と、強引に電話は切れてしまった。
通話終了の“ツー”という音が、無音の室内に響き渡る。
ちゃんと理由言ってくれよ......強引にでも聞けばよかった......
「――――で、どうやって元に戻ろうか」
ルーク云々は関係なしに、俺は人の姿へ戻らなければならない。このままじゃ、フィンを最強の魔王にとか笑い話も良い所である。
てか、こんな時の女神パワーなんじゃねぇの?
なんて顔で(顔なんて無いが)プリメーラの方を見たら(目なんて無いが)、プリメーラは慌てたように首を横に振った。
「幾ら私が万能完璧な女神様でも、今のトウヤを元に戻すのは無理よ~!」
やっぱそうか......
ルークの件も気にならない訳じゃないし、一刻も早く元の姿へ戻らなければ!
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