第56話 アンバランスティーパーティー②
「――――よし。ある程度は集まったし、これからの話をしようか。俺達
ユグドが不敵な笑みを浮かべそう言い放つが、誰も意に介さずに各々好きなようにしている。
トゲ髪の青年は、一口紅茶を飲み「不味い」とだけ呟き不貞寝を始めた。
ヴィフラムは老人と一緒に来た幼い少女と楽しく談笑をしている。それを見ている老人もとてもにこやかだ。
「誰も聞いてないね......」
呆れ顔をしながらユグドは再び席に着く。
要は
「――――それでユグド殿。ワシ等を集めたという事は、何か話さねばならない事があるのじゃろう?」
ヴィフラムと少女の話が一息ついたタイミングで、それを見守っていた老人が口を開く。
「やっと話が始められそうだ。助かったよ“アジューガ”」
「いえいえ」
八番目の席に座る老人は名をアジューガと言うようだ。
柔らかな物腰はどこか気品を感じさせる、しかし同時に隙のない雰囲気を纏っていた。
「......私、眠い......」
少女は必死に目を開けていようと擦った。それでも眠気は取れないようで、うつらうつらとしている。
「マースも来てくれてありがとう」
「......ん」
鮮やかなピンクのワンピースをふわりと身につけた少女......マースは自分の頬をペちペちと叩き目を開けた。
「今回も欠席なのは…四席と三席ですかな?」
「あの二人は来る方が怖いわ」
「私......顔......忘れた」
「まぁ俺もダメ元で招集してみたんだけど、やっぱりダメだったんだよね」
「――でよ、で! ユグドが私達を集めるって事は......サイリスの事でしょ?」
ヴィフラムの言葉によって一瞬で空気に緊張感が走る。
「ヴィフラムの言う通り、今回はサイリスが負けたという事についてだ」
「おいちょっと待てサイリスがなんだって!?」
今までテーブルに突っ伏していた青年がその言葉で飛び起きる。
「ラクティス黙って。アンタが入ると話がややこしくなるわ」
「テメェヴィフラムいい度胸じゃねぇか......ここでやるか? アァ!?」
「私より弱いくせにイキってんじゃないわよ死ね!」
静止したヴィフラムの胸ぐらを掴み、ラクティスと呼ばれたトゲ頭の青年が吠える。
ヴィフラムも我慢の効く方ではないので更に逆上。一触即発の雰囲気が周囲を覆い尽くした。
「話が進まないから......二人とも座って」
しかし、そんな怒りの炎を消し飛ばす程にユグドの圧は凄まじいものであった。
「ごめんユグド」
「......チッ!!」
立ち上がった二人が戻るのを確認して、ユグドは再度話を進める。
「みんなも知っているだろうけど、サイリスがファストレアの警備局へ自首した。記事の内容的に第三者に勝負を仕掛けられ、負けた。その可能性が高い」
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