第57話 アンバランスティーパーティー③
「――――みんなも知っているだろうけど、サイリスがファストレアの警備局へ自首した。新聞に載っていた記事の内容的に第三者に勝負を仕掛けられ、負けた。その可能性が高い」
「負けた? あのサイリスだぞ? 認めたく無いが、あいつは俺より強いんだぞ!?」
ラクティスがにわかには信じられないといったように叫ぶ。
サイリスは
「俺だってサイリスが負けたなんて信じられない。だが......幽閉されている彼を奪還するようヴィフラムへ依頼したんだが......そこでも想定外の事が起きた」
「想定外の事......ですかな?」
アジューガの質問に代わりに答えたのは、当事者であるヴィフラムだった。
「私があのオッサンから“契約”させられたのよ。【壊し屋】のトウヤを殺すなって。あれは自分が殺すからって」
「それで、殺さない程度に適当に痛めつけようとしたら逆に深手を負ってしまったと」
「なんで言うのユグド!!」
そして隠したかった所はユグドに言われてしまった。
「それなのにこの元気とは......若いですな......」
「なっさけねぇなヴィフラムサンよォおい!」
「んだと!?」
「契約......絶対。なければ負けてない......でしょ?」
「マース! そもそも負けてないから! 興味が失せて帰ってきただけだから!」
また話が脱線しそうな予感を感じ取ったユグドが、軽く咳払いを挟む事で次の話へと空気が向かう。
「俺としては、サイリスを倒した壊し屋のトウヤもすごく面白い人物だと思う......でも、俺が注目したのはヴィフラムに深手を負わせた小さな子供さ」
「あぁ? ヴィフラム程度をボコせるガキなんて特別でもなんでもねぇだろ」
「そんな訳ないでしょ。あれは異常よ! そんな子供連れてるトウヤも異常!」
「その子......並の魔力じゃない。私も......厳しい」
「この中ではその子供と一番歳の近いであろうマース嬢でも難しい事をやってのける子供......まさか......いや、有り得ない!」
このやり取りの中でアジューガの考えた一つの可能性。しかし、すぐさま有り得ないことだと否定する。
異常な程その身に宿している魔力。ヴィフラムを傷つける魔法。サイリスを沈めたトウヤという人物に付き従っている。
それだけで根拠は無い。だがどうにも否定しきれない。
「いや、アジューガの推測と俺の予想は同じだろうね」
「勿体ぶらずに早く言えよユグドサンよぉ!」
ユグドは急かされるがままにテーブルの上に置いた地図を指さし、上機嫌そうな表情を浮かべた。
指の置かれている地点はファストレアだ。
「――――恐らく、トウヤの連れている子供は俺達の目的に必要なピースの一つ......魔王の称号を持つ存在だ。そして俺はその子供を
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