第50話 攻勢へ①

「どぉーだコーガザス!! これでテメェをぶっ飛ばす!」


「素晴らしい底力だ......もっと楽しもう! トウヤ!!」


 できて良かった......これが対ジン格闘術の序! 凄いパワーだ!


 コーガザスは構えた体勢のまま人差し指をクイクイと動かす。


 受けてやるから来いって事か。


「じゃあ遠慮なく行かせて貰うぜェ!!!!」


 初速の入り方がさっきまでと全然違う!! 地面一蹴りで一気に10メートル位進める......


「って止まらねぇぇぇぇ!!!!」


 そのまま俺は大木にぶつかってしまった。


「っ~~~~!!」


 主に前面が痛い......ってあれ? あんまり痛くない?


 そうか! 対ジン格闘術が闘気と同じ原理なら、俺は今闘気を使ってるって訳だ! だから衝撃に耐性が付いたんだ!


「おい......大丈夫か?」


「ぜんっぜん平気だわ!――――あとは自分の心配した方が良いぜ」


 今ので慣れた。次は上手くやれる。


 俺を受け止めた木をスタートブロックの要領で使い、更にスピードを上げる!


「なッ――――」


 闘気で包まれた拳は更に重く、より強固になる。


「オォォォォォォラァァァァァッ!!!!!!」


 守る闘気と攻める闘気が先ず衝突する。


 闘気は攻めに使った方がより強くなる。なぜなら、その一点に威力を集中させる事が出来るから。


 削り合いを制した俺の拳がより硬い外殻へ届く......届け!! 届かせる!!


「アアアアアアアア!!!!」


 ビキビキと何かがひび割れる音が......今度は確かにコーガザスから聞こえた。


「面白い......最高だトウヤよ!! オレの外殻にヒビが入るなど......一体何年ぶりだ!?」


「俺が知るかよ! ぶち砕いてやるから力入れとけやァッ!!!!――――」


 まだだ......まだヒビが入っただけ......今度は確実に砕き割る!


「今度はオレもそう易々とは喰らわんぞ」


 そうだよなぁ......当然腕でガードするよなァ!!


 その防御も全部ぶち抜いてやるよ!!


「――――グッ!!?!?」


 まずは蹴りで腕の防御を剥ぐ! 


 そしてェ!!


 その勢いを更に載せてより強く拳を振り出す!!


「はアッ!!!!」


 外殻のヒビはもっと大きくなった。だがまだ砕けない。


「ガッ!?......ク......」


 だが、俺は遂に山のように不動だったコーガザスをよろめかせる事に成功した。


「どうした......手も足も出なくなったか......」


「否......嬉しいんだ......トウヤがここまでオレと闘えたことが!!」


「そうかよ......じゃあとっととそれ以上へ行ってやるよ」


 だが、大分息が上がってきた......体力の消耗が激しい......これが対ジン格闘術のデメリット!


 一方コーガザスの方も腕の再生で余程体力を使ったのか、肩を上下に揺らすように呼吸をしている。


 お互いにギリギリの勝負。恐らく決着はもうすぐ着く!


「出し尽くす! ハァァァァァ......アァッ!!」


 気合い入れろ! 全てを闘気に!!


「闘気の総量が上がった......? これは不味い......」


 コーガザスが追い切れない程に速く!! 全身の細胞を働かせろ!!


 一歩目の蹴り出し。極限まで力を込めた踏み込みは地面を焦がし、俺の身体は音を超えた。


 空気が身体に触れる度、粘土のようになった大気の壁が裂けていく!!


 これが今の俺の全力!!


「防御が――――間に合わな――――!!!!」


四木ニニギ流対ジン格闘術“正拳“威空いくう


「ア゛ッ......ガァァァァァ!!!!」


 コーガザスの顔面は砕け、直線上の森を更地にしながら吹き飛んで行った。

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