第49話 物陰より
物陰に隠れ勝負の動向を見守る女神と魔王は、トウヤの変化に驚きを隠せずにいた。
「ににぎりゅうたいじん......じょ!......ってなに?」
トウヤの身体は分かりやすく闘気が湧き上がり、赤い光を放っていた。
「“
「しってるのかプリメーラ」
「だぁからなんで年下のクソガキに呼び捨てにされなきゃなんないのよ!......口調だけはホントに似てきたわね......私だって実物を見るのは初めてよ。と言うか、トウヤが使える事自体初めて知ったわ」
プリメーラは、トウヤの生前の情報が全て事細かに書いてある“人生履歴書”を見ていた為、その存在は知っていたのだった。
しかしソレには、トウヤが使用できるという情報は一切載っていなかったのだった。
「今トウヤが使ってるあの技は、トウヤのお父さんのお父さん......が編み出した技よ」
「トウヤのお父さんもそのお父さんもつよいんだね!」
「そういう事になるわね......」
ここでプリメーラにはある疑問が浮かんだ。
《なぜ平和なはずの元の世界で、こんな戦闘に特化した技術が必要だったのか》と。
トウヤは、トウヤが元いた世界からは初めてこの世界へ転生させられた人間である。
それが関係あるのかは不明だが、女神プリメーラはトウヤの世界の事情をよく知らなかった。
そして、トウヤの人生履歴書の内容も三分の一以下しか覚えていなかった。
ここへ来てプリメーラは自身のいい加減さに腸が煮えくり返る程の怒りと、今すぐ発狂しながら走り回りたいくらいの後悔を感じた。
(後でトウヤの生前について聞こう)
プリメーラは固く決心した。そしてトウヤもトウヤで生前の記憶がそこまで無い事に落胆するまであと数時間。
「――――それでプリメーラ、あれどんなわざなの?」
あくまで呼び捨ては変わらないのね。と半ば諦めの境地に立ったプリメーラは言葉を続ける。
「そういえばその話の続きだったわね......アレは魔力の無い人間が感情をエネルギーに変換して闘気を纏う技よ」
「我もできる?」
「魔王のアンタは普通に魔力を纏えばそれっぽい事が出来るわよ~」
「ほんと!? これでせいちょうっ!」
トウヤは魔力を体に纏うという恐ろしく感覚的な事を分かりやすく教えるクエストが始まった事を、今はまだ知らない。
(にしても凄い闘気の量......単純に感情を昂らせただけでこんなにも
トウヤは笑っている。それに呼応するように、コーガザスもビシビシとオーラを振り撒く。
「どぉーだコーガザス!! これでテメェをぶっ飛ばす!」
「素晴らしい底力だ......もっと楽しもう! トウヤ!!」
両名の激突は、天上の存在である女神を震わせ、魔王を更に強くする。
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