第48話 賭け

「腕が......再生しやがった......」


 コーガザスは新しい腕の感覚を確かめるように上下左右へ振り回す。


「無論、デメリットはある。少し疲れるんだ......だから、こうして魔力を解放した訳だが......どうする? まだやるか?」


 立ち昇り、全身に纏われた魔力......吹き出る量も圧力も今までの誰よりも桁違い! これがコーガザスの全力!!


「当然やるに決まってんだろ!! 俺だってようやく身体が慣れてきた所だ!」


 いや、正直ギリギリ? だが動きは目で追えるようになってきた! 後は馬鹿みたいな膂力さえ何とか出来れば......


「やはりそうだな......そうでなければ面白く無いぞ......トウヤよ」


 踏み込みで地面が爆発した!? いやそれより!! 速さが上がって――――


 動きを捉えきれない!!?


「ヴッ............!!?!?」


 蹴りのめり込んだ腹部から“ブチブチ”と聞いた事が無い音がする。内蔵でも破裂したのか、口から血が溢れ出た。


 パワーも上がってるのか!! 魔力を纏っているから!


「ヴッ......ガァァァァァ!!!!」


 無理矢理力を入れて殴っても、当然のように傷は付かない。


「闘気を纏ったオレの攻撃を、闘気での防御無しで受けて尚意識を保つとは......正直驚いたぞ」


「闘気......? なんだそりゃぁ......初めて聞いたな」


「闘気とは全身に魔力を纏わせ、直接攻撃や防御に転用する技術の事だ。達人になればソレをエネルギーの塊として飛ばす事も可能だと聞く。要は魔力を言い換えただけだ。本質は殆ど変わらん」


「なるほどねぇ......」


 つまり、俺の考えは当たってた訳だ。俺も使えるようにならねぇかなぁ......


 まぁ考えてもしょうがない。今はコーガザスとの闘いに集中!


「――――まだ構えるか。お喋りも存外楽しかったのだが......もう良いのか?」


「クッソ腹痛てぇから喋ってると痛みが増して困るんだよ。息は整えたし、今度はこっちから行かせて貰うぜ」


「......来い」


 勝つ為に俺ができる事。それは知ること。コーガザスの身体を......魔力を......闘気を! 


「オッ......ラアッ!!」


 俺のストレートがコーガザスの胸を穿つ......が!


「闘気を纏っていてもこれだけの衝撃......やはり凄まじいな」


「ノーダメージの奴に言われても嬉しかねぇよ!」


 今の拳が触れた時の違和感。鉄で編み込まれたネットの先にある外殻を殴っているような感覚......これが闘気!


 あれ、確か前世でも似たような感覚があったような......なんだっけ?


――――そうだ! 親父との組手だ!! 親父を殴ろうとするといつもそんな感じで弾かれてた!(殆ど攻撃が当たった覚えないけど)


 つまり、親父は闘気を使える......可能性がある! ならば魔力が無い俺も出来るはず!


 久しぶりに、俺も教えに忠実にやってみるか!


「雰囲気が変わった......何か掴んだな?」


「ああ。お前でぶっつけ本番の実践編だ」


 俺の仮説が正しいなら、俺は......俺達は。


 何倍にも強くなれる。


「コーガザス! 思い出させてくれてありがとう」


 一か八か。ここに俺の全てを叩き込む。


四木ニニギ流対ジン式格闘術】“序”


 出来るか賭けだが......やってみるか......

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