第47話 勝機の到来②

「――――オレの攻撃をあれだけ喰らって立ち続ける人間も珍しい。だが、これで終わりにしよう......否、これで終わりだ」


 全員の視界から消える加速から繰り出されたコーガザスの拳は、心臓を貫いた。


 およそ人から出ているとは思えない爆発音と衝撃波が森を揺らす。


「トウヤ......トウヤァ!! ちょっと!! まさかお金の為に本当に死――――」


「ははぁ......ハハハハハハァ!!!! 終わってねぇぞオイ!!」


「御仁......打撃が当たった後にオレの腕を受け止めても遅いのだぞ......」


「そうだなァ!! 滅茶苦茶痛てぇよ!! だが――――」


 両腕でがっちり固めた!! もう逃げられねぇぞ!!


「幾ら全身ガチガチ外殻でもよォ......関節は柔らかいよなァ!!!!」


「ッ!!? まさか......最初からこれが狙いで......わざと攻撃を受けたと言うのか!?」


 今更逃げようとしても遅い!


「あったりぃ~!!!! まーアドリブだがな......上手くいって助かったぜ」


 このタイミングで殴られようと蹴られようと絶対に腕は離さん。絶対にねじ切ってやる!!!!


四木ニニギ家の大事なお約束その24!【殴られたくなかったら、殴る奴の腕をもげば良いじゃない】!!」


「なっ......離れろ――――ウォォォォォォ!!!!」


「もげろもげろもげろもげろもげろもげろもげろもげろもげろもげろもげろォォォォ!!!!」


 引っ張る動作に、更に回転を加えて全体重を上乗せする!! 


 肉の剥がれる音が聞こえる。


 そして遂に、負荷に耐え切れなくなったコーガザスの右腕の肩から下を引き千切る事に成功した。


「は......ハハハハハハァ!! どうだコーガザス! お前の主力装備リーサルウェポンを一個取ってやったぞ!! どうだ参ったか!!」


 右腕の無くなった感覚を確かめるように、残った左手で傷口を抑えている。血のような液体が溢れ出ているが、それを気にしている様子は無かった。


「御仁......否、トウヤよ。今の攻撃、見事であった。これは礼だ。良い物を見せてやろう」


 コーガザスはそう言うと、魔力を立ち昇らせ始めた。やはり魔力がゼロという訳では無かったようだ。


 しかし......何だこの魔力量......出しただけで森が枯れ始めたぞ......俺も魔力に当てられて足が竦む......これがコーガザスの全力か!!!!


「いい物って、なんだよ」


「直に分かる」


 その瞬間、魔力をよく知らない俺でも感じる事が出来た。


 今、コーガザスの全細胞に魔力が供給されている。その感覚を。


「はあっ!」


 細胞に満ちた魔力を放出するように気合いを入れる。すると、“ビチンッ!”という音と共に


「はは......反則だろ......」


「私の魔法と同等の回復を......魔力のみでやるなんて......」


 物陰より覗き見ていたプリメーラが、目の前で起きた出来事に呆然としている。


 俺がもぎ取った右腕が、完全に再生したのだ。


「さァ......お互いに程良く温まった所で第二ラウンドの開始だ」

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