第46話 勝機の到来①

「ヌァァァァァッ!!ダァァァァッ!!!!」


 コイツ......!!


「ふっ......はっ!」


 どんなに攻撃しても......


「ッ!? ぐぁぁぁぁッ!!!!」


 ダメージが通っている気がしない!!!!


 どれだけの打撃を繰り返した? なんで無傷なんだ!?


――――いや、理由は分かっている。ただ単純に俺の拳が、蹴りがコーガザスの外殻を破壊するだけの威力を持っていないのだ。


 そしてコーガザスの攻撃もまた、より苛烈さを増す。


「成程よく避ける......速いな」


 声が俺の耳へ届くよりも速く蹴りが飛んでくる。俺の反射神経ギリギリのスピードッ!!


「ッ!?」


 蹴りが避けれても風圧で身体が吹き飛ばされ――――


「空中では受身も取りにくいだろう」


 飛び上がっての更に追撃が来る!!


「なら真っ向勝負じゃぁァァァ!!!!」


 お互いの蹴りが交差する。


 俺の方は蹴りの威力を限界まで殺すのに精一杯。それでも脚から全身へと痛みが貫くのだからたまったもんじゃない。


 一方コーガザスの赤く鋭い眼光は“次”を捉えていた。


 俺より下側にいたはずのコーガザスは、そのまま地面へ降下することは無かった。なんなら俺の頭上へと上昇していた。


「今のを受け切られるとは思わなかったぞ......ならば、もう一撃入れるまで」


「うわっ!!?」


 コーガザスの握られた両拳が的確に身体の中心を捉える。俺の身体は自由落下を遥かに凌駕する速度で地面へと叩き付けられた。


「ヴゥ......グフッ......」


 受け身も取れずにまともに喰らった......呼吸が上手く出来ねぇ......


 殴り合って分かった。コーガザスは一切魔力の類を使っていない。


 俺が今まで闘ってきた奴らは全員、魔法こそ使わなかったものの多少は魔力でその身体をおおっていた。


 魔力は矛であり盾である。


 攻撃に転じれば身体能力を高めたり、魔法を使えるようになったりする。


 そして守りに転じれば相手の攻撃をある程度緩和出来たり、プリメーラがやるような結界を張れたりもする。


 俺に生まれ持って魔力が無いのが惜しいと感じる程に魔力は万能なのだ。


 それをコーガザスは一切纏っていない。完全にゼロだ。それがわざとなのか俺と同じように魔力が無いのかは分からないが。


 瞬間移動かって位速い動きは走っているだけだし、俺の攻撃で傷一つ付かない外殻はめちゃくちゃ頑丈なだけ。防御なんて意味の無い数々の攻撃はその速度と重さが何故か両立してるからこそ可能なだけ。


 つまりコイツはただ堅くて、ただ速くて、ただ強い。今まで俺が闘ってきた誰よりも本物の化け物だ。


 だからこそ! 俺は心の底からコイツに勝ちたいと思っている!!!!


 そして今! 勝つ為の最高の名案が浮かんだ!!


「――――そろそろやめにするぞ。夕刻だ。換金所が閉まってしまう」


「もう勝った気でいるのかァ!? 俺まだ負けてませんけど!? 俺のハートがビートを刻む間は俺の勝利条件内ですけどォ!?」


 血流が速くなっていくのを感じる......今なら......勝てる!!

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