第51話 攻勢へ②
どれだけの攻防を繰り返したのだろう!
恐らくそこまで長い時間は経っていないが、俺とコーガザスは永遠とも思える一瞬を共に体験していた。
俺が殴ればコーガザスがガードする。そこへカウンターの回し蹴りが来れば俺が避け、すぐさま反撃へと転ずる。
闘気...魔力の削り合いは体力の削り合いと同義だが、そんな底は俺達にとっては無いも同然のように感じる。
森には唯、俺達の笑い声と闘気の衝突による爆発音だけが木霊していた。
「どうだコーガザス!! そろそろ疲れてきたんじゃねぇか!? 最高にイカしてたピッカピカの外殻もボロボロじゃねぇか!!」
「笑止! トウヤ!! お前も闘気の出力が落ちて来ているぞ! お前こそオレが圧倒していた時のダメージが今になって効いてきているのではないか!?」
「そんな事ありませんけどォ!? まだまだ元気ビンビンなんですけどォ!?」
「そうか」
そう言うとコーガザスは攻防から抜け出し、俺から大きく距離を取った。
「? 何をするつもりだ?」
「トウヤ......お前はバッタと言う虫を知っているか?」
質問を質問で返すなよ......
「知ってる。それがどうした?」
「あの虫は凄い。凄まじい脚力を持っている......だからオレの技にした」
「ッ......!!」
今までコーガザスの全身から吹き出ていた闘気が両脚へと集中する。
「さァ......行くぞトウヤ......避けるなよ」
「避ける訳ねぇだろうが!! 俺を誰だと思ってるんだ!!」
コーガザスは短く呼吸を整えると、消えた。
さっきまでの消えたように見える高速移動とたった一つ違ったのが、コーガザスが踏み込んでいるであろう地面がクレーター状に抉れていることだった。
そしてクレーターは爆発音を響かせながら此方へと近付いてくる。
俺の眼前10メートル程の地点で、一際大きく地面が凹んだ。飛び上がった――――!!?
空中から来るッ!!
「喰らえ。【
「特撮ヒーローかよ――――」
――――雷が落ちたかのような凄まじい熱と音がトウヤを、空を、大地を灼き尽くす。
木はなぎ倒され、草木の枯れた円形の領域は更に大きくなる。
「はあっ......はあっ......! 流石に闘気を使い過ぎた......」
もうもうと立ち込める爆煙の中より姿を現したのは、ふらつきながらもしっかりとその脚で立つコーガザスだった。
「まだ死んではいないと思うが......」
煙の中を手探りで、倒れているトウヤを探そうとしている。
その瞬間、コーガザスは煙の中より攻撃され、メキリと音を立てながらぶっ飛ばされた。
「はっはァ!! 今のはやばかった! 最っ高にやばかった!!」
服も消し飛んだし全身粉々になるんじゃねぇかってくらい痛えけどまだ立てる! まだやれる!
「何故......オレの蹴りを喰らって尚立っていられる。直撃した筈だぞ」
「ああ! 確かに俺はお前のキックをモロに喰らった......だがお前がどう思おうが今の俺は現実だぜ」
「......分からん。生きているのはまだしも何故立ち続け、オレを殴り飛ばすだけの気力があるんだ?」
「決まってんだろ。気合いと根性だよ!」
結局闘いってのは最後まで折れない心を持った奴が勝つのだ。
「成程。気合いと根性か......ムシは出来んな......完敗だ」
コーガザスは、一番大きなクレーターの中心で大の字になって意識を眠りの闇へと落とした。
俺は勝ったのだ。
「ははっ......ははははっ! 勝ったぞぉぉぉぉ?......お?」
身体にうまく力が入らねぇ......
地面に倒れそうになった俺を優しく受け止めたのは、ショクのプルもちスライムボディだった。
「――――全く......緊張の糸が切れたのね。今回復してあげるわ」
「ありがとうな......プリメーラ......」
「トウヤすごかった! 赤くなってバシューって虫さんとかってすごい! 我もできる?」
「俺ができるように必ずしてやる......」
「あれ、トウヤ?」
「目ェ開けたまま気絶しちゃったわね......」
「えーーーーっ!?」
大森林の主を賭けたコーガザスとの闘い。
勝者――トウヤ。
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