第43話 それ
“それ”は大森林の中心でただひたすらに座禅を組み、瞑想していた。
見下ろす事など出来ない森。本来ならばどこが中心か等と分かるはずもないが、今“それ”のいる場所が大森林の中心であり最奥であると一目で分かった。
だって、それを円の中心にして、一切の草木が生えてないんだもん。
黒ずんだ塊の上で座禅を組み瞑想するそれ。
間違いない。大森林のヌシだ。
「なんて、コソコソ隠れながら考えててもかっこ悪いわよ!」
「お前だってコソコソしてんじゃねーか......」
「だって! 明らかにヤバイ雰囲気醸し出してるわよアレ!」
俺達は、草木の生えていない円形の領域より数メートル後方で様子を見ている。そして結局ここまで、魔物及び冒険者に遭遇することはなかったのだった。
円形の領域は謎の黒い塊と、その上の瞑想しているソレを中心に半径20メートル程。黒い塊も高さ3メートル位はあるので、これだけ離れていると瞑想しているソレの正確な姿は分からない。
「――――そこに隠れ潜む御仁。出てこい」
ソレがこちらへと静かに視線を向け話し掛けて来た。やっぱり気付かれてやがったな......
そして理解出来る言葉を発した! これは朗報と取っていいのか凶報と考えた方が良いのか......話の分かるやつだとありがたいんだが。
「今の所あんたと争うつもりはねぇよ......大森林のヌシさんよ......」
ちょっと嘘だ。
大森林のヌシは、黒い塊から降り立った。近くでよく見るとその姿は甲虫を擬人化したような見た目であり、2メートルはあるんじゃないか? という圧倒的な背丈に筋肉が貼り付いていた。
なんというかこう......男の子が誰もが一度は憧れたようなあのヒーローを彷彿とさせる......つまりめちゃくちゃカッコイイ!!
大森林のヌシは己がそう呼ばれた事に首を傾げながら近付いてきた。
「大森林のヌシ......それはオレではない......」
「えっ!? そうなの!?」
大森林のヌシじゃなかった人(?)の口から(口ないけど)告げられる衝撃の新事実ッ!!
「じゃあアンタ誰だよッ!!!」
「オレは誰か......凄まじく難しい質問であるな......」
「チョット待って欲しい」と言い残し、彼は再び瞑想の海へと帰って行った。
そして数分後......
「オレは
「それ言う為だけの瞑想!? 情報うっっっっす!!」
オマケに大森林のヌシではないの言うのはさっきも聞いた情報である。
「面目無い。オレ達
難儀な種族だな
恥ずかしい事とか考えてたら筒抜け......って事もあるのか。
「お前の事は分かった。で! お前が大森林のヌシじゃないなら、誰が大森林のヌシなんだよ?」
まぁじゃない奴に聞いてもしょうがないだろうけど......
「それは......この場にいる」
「「なにいいい!?」」
俺とプリメーラの驚きを孕んだ声が、森を震わせた。
蟲魔人が指さしたのは、意外なものだった。
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