第35話 爆姫の行進⑥
「アハ! アハハハハハ!! 俺! 生きてるぅ!!!!」
黒よりも黒い黒煙の中から顔をのぞかせる陽の光が、自らに生を実感させる。
「私が生かしておいてあげてるのよ!! 契約の対象外とは言え、アンタとくっついて死ぬのは死んでもいや!!」
息を切らし、自慢の一張羅をボロボロにしたヴィフラムが凄い形相で俺の事を睨みつける。
地面の抉れ具合から察するに、火球はヴィフラムの直前で100パーセントの火力を出したみたいだ。恐らく、ヴィフラムに直撃する前に自身の爆発で中和したのだろう。
「はぁ......疲れた。こんな事で私の手を煩わせて.....帰る!! トウヤ! アンタの事は契約期限が切れたら絶対殺してやるんだから! 覚悟なさいっ!!?」
ヴィフラムはそう言い残すと手を俺の肩から強引に引き抜き、どこかへと消え去った。
「んっのやろ......強引に肩からぶち抜きやがってぇ......いってぇなこんちくしょぉ......」
「ちょっとトウヤ大丈夫!? 全く無茶ばっかりするんだから!!」
回復魔法でみるみる傷が塞がっていく。それと共にプリメーラの声も大きくなる。なんで?
「無茶させてんのはおめぇだろ!! ヴィフラムの爆破が無かったら死ぬとこだったんだぞ!!?」
実は、俺がヴィフラムを殴ろうとした正にその瞬間。プリメーラから一瞬のテレパシーが入ったのだった――――
~~~~~~
「――――服も血で汚れちゃうし......やっぱり浮きながら戦えばよかった」
(トウヤ聞こえる!? 名案が浮かんだわ!!反応しなくても良い! アンタは適当に大怪我してそこに彼女が触れる瞬間を待ってて! あとはこっちで上手くやるから!!)
ああ、やるしかないのか.......
「余所見してんじゃ......ねぇ!!!!」
まあ、作戦とあらば一応は勝算があるんだろう......信用するぜ......?
~~~~~~
「で、誰だよこのバカみたいな作戦考えた奴」
「ジブンですねぇ......動けない分、こういう所で役に立とうと思いましてねぇ」
手を挙げたのはライであった。
おめぇーかよ!!
「しかし旦那ぁ良く触ってくれるって分かりましたねぇ......ジブンでもそんな状況無いと思って提案したんですが」
そんな危ない橋渡らされてたのかよ......
「多少根拠はある。ヴィフラムは、爆破した傷口とか肉片に必ず触ってた。あんなに服が汚れるのを嫌がっていたにも関わらずだ。だから癖で触ってくれるかな~って」
勿論、そうならなかった場合は無理やりにでも決行してたがな。
「トウヤぁ! 我のまほうすごかった?」
治りかけの肩にフィンが重くのしかかる。
「すごかったぞ! でも、味方を燃やすのは危ないから魔力のコントロールも学ぼうな」
「うん!」
しかし、この短期間で......しかも俺の戦い(魔法無し)を二度見ただけでここまで強くなるとは......魔王って、実はめちゃくちゃ伸び代が凄い??? めっちゃ楽しみなんですけどぉ~!
「――――そうだプリメーラ、確かお前って“魔力の流れを止める”結界ずっと張りっぱなしだったよな?」
「ん? うん。フィンが魔法を使うまではずっと」
やっぱり......じゃあなんで......
「ヴィフラムはバカスカ魔法を使えたんだ?」
俺の問いに、プリメーラははっとした表情を見せる。
「確かに......変ね」
「それに関しては俺達から説明しよう。だかその前に、彼女がなんなのかを知る必要がある」
いつの間にか消えていたガリアとルークが、警備局だった瓦礫の山の中から人を抱えて現れた。俺のどさくさに紛れて生存者を助けに行っていたのだろう。
「それでガリアさん、ヴィフラムは何者なんだ?」
ガリアも半ば信じられないと言った様子で、重苦しく口を開く。
「彼女は、本名“ヴィフラム・ヴォーパルス”。始まりの勇者の末裔とされている一族にして、今は
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