第34話 爆姫の行進⑤
「舐めてんじゃねぇよ! 約束は守れよ教育に悪いだろうがァァァァ!!!!」
「そんな理由で私と戦う訳? 頭おかしいんじゃないの?」
バカをを見ているかのような目を俺に向け、ヴィフラムは地上へと降り立った。
バカから人を見る目へと変わったヴィフラムは、俺をじっくりと眺め始め、何かに気が付いたかのような声をあげた。
「あ~アンタ! 壊し屋のトウヤでしょ?」
「それがどうした!?」
「アンタは殺すなってある人に言われたの。まぁ言う事聞く義理はないし、そもそもそいつ回収しに来たのに拒否した挙句そんな事ばっかりほざいてるから殺してやろうと思った訳! でもこんな爆発じゃ死なないし殺せないわよね~......あぁもうムカつく!!」
突然演劇っぽい話し方になったかと思えば、次の瞬間には怒りに任せて地団駄を踏んでいる。
なんなんだコイツは!! さっきから何の話をしているんだ!!
「......で、俺を殺さないようお前に言ったのは誰なんだよ」
「アンタに教える必要ないわね」
そりゃそうだ。回収って事は仮にも仲間なのだから、そう簡単に言うわけが無い。
「じゃあ、泣くまで殴って吐かせる」
「だぁから~アンタを殺せないのに私が戦うメリットが――――速ッ!?」
反応が遅れたな。ワンパン......とまではいかないだろうが、相当堪えるだろ!
と思ったのも束の間、案外アッサリと躱されてしまった。
鮮やかな水色をしたサイドテールから覗く首筋には、天秤を模した刺青が入れられていた。
「刺青とか!! お母さんが泣いてるぞ!!」
「私、そういう男って嫌いなの」
拳がヴィフラムの鳩尾に衝突する直前、俺の右手が弾け飛んだ。手首から下はギリギリ皮一枚繋がっているが、肉と骨が全て無くなっている。
取れかかった俺の右手を、衣服に付着した血を拭う為に強引に引っ張り、服を撫でさせる。手の感覚は全く無い。
「服も血で汚れちゃうし......やっぱり浮きながら戦えばよかった」
ああ、やるしかないのか......
「余所見してんじゃ......ねぇ!!!!」
流血は気合いで止めた。痛みは我慢する! まだ俺には
「楽しくないんだって。そういうの」
左腕は肩から三割程吹き飛ばされた。不幸中の幸いなのは、熱で血管が焼けて出血がそこまで酷くない事だろうか......だがその痛みと焦げるような熱さは凄まじい俺に苦痛をもたらす。
「ぐうっ......アアアアアアア!!!!」
「いい? 殺すなとは言われてるけど、死なない程度に痛めつけるのはありなのよ」
焼け焦げた断面の見える俺の左肩に爪を立てながらヴィフラムは耳元で囁いた。
「喋んなよ......痛くてよく聞き取れねぇだろうがよ......」
「あらそう? じゃあもっとヤったら耳も良く聞こえるかしら?」
肩がさらに吹き飛ぶ。腕ごと取れそうだ。
「気分がノらない日に限って調子が良いのもなんとかして欲しいわ......」
ここだ。
「そうかよ。それなら、大嫌いな俺とくっつきたく無かったら早く手ぇどかした方がいいぜ」
「何を言って......!?」
ヴィフラムの視線が捉えたもの。それは俺の大きく穴の空いた肩とそこに置かれたヴィフラムの手が回復魔法で結合しかかっている瞬間だった。
「なにこれ......どう言うつもり!?」
「私の遠隔回復魔法よ! 正直、使うのは初めてだから、上手くいって助かったわ!」
「こんなもの......もう一度爆破して抜ければ――」
「おっと良いのか? 体内で完全に繋がった肉体を引き剥がせる位強い爆発を起こしたら、俺が死ぬんじゃないのか? お前は契約を持ちかけられた側。誤魔化しは効かねぇぜ?」
“契約”は持ちかけた側が反故にした場合と、どちらか又はどちらもが契約内容に反した場合に罰が下る。
「まぁ良いじゃねぇか。さっきお前が殺した男との“約束”を破った罰が下ったと思えば――――フィン! 一番でっかい火をくれ!」
「分かった! はぁぁぁぁぁ......」
フィンの眼前に純粋な魔力で形成された火球が現れる。
それはサイリスを焼いた獄炎より何倍も大きく、温度も高かった。成長してるって事だな!
「アンタも死ぬわよ!?」
「残念! 俺はまだ死ぬ訳にはいかないのだ~!」
周囲の空気を焼きながら火球が俺とヴィフラムヘ迫る。
「まさか......本当に――――あのクソオヤジが言うだけあるわ......大人しく帰れば良かった――――」
フィンの火球は、この日一番の大爆発を起こして俺ごとヴィフラムを焼き払った。
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