第28話 集まる馬鹿野郎共
「副長......犬ってのは『うにゅっ!』って泣くんですかい? もっとこう......『わん!』とか『ばう!』とか『ナンヤボケコラオマエェ!』とか鳴くモンだと思ってましたぁ......」
「いや最後だけ明らかにおかしいだろ」
「ちがうの! ほんとうに犬なの! そうでしょ?」
「......うにゅっ!」
「今ちょっと考えたぞこの犬。どうしようか一瞬迷ったぞ」
「まぁいいじゃぁないですか副長。犬だろうとそうじゃなかろうと、首輪着けてる以上飼い主がいる。飼い主見つけて保護料ふんだくるのがジブン達の仕事じゃあないですか。よぉーしよしよし......な、雲丹五郎」
「ちがうよ! 名前は“うにゅ”だよね!」
「うにゅっ!」
雲丹五郎よりも、うにゅの方がしっぽが良く反応した。よってこの犬のような生物の名前は“うにゅ”となった。
「言い方悪いし名前勝手に付けてるしよく触れるなお前達......」
ライが頭の毛並みを堪能するように撫でる。犬もとても気持ちが良さそうな表情でゴロゴロと喉を鳴らしているが、ルークからしてみれば一応未知の生物である。スキンシップを重ねるライを怪訝そうな表情で見つめていた。
「それでボク......壊し屋のガキ。まぁこの謎生物を連れて来てくれてありがとうな。送って行くぞ」
「いや! うにゅのトウヤ見つけるまでかえらない!」
「はぁ?......ったく、こっちだって暇じゃねぇんだよ。飼い主が見つかったら教えてやるから、今日の所は――」
ここでルークはフィンの目を見る。そして気付いた。絶対に飼い主を見つけるまで行く末を見届けるという決意を宿したその目を。
「っ~.....わかった分かったよ! ただし! 日が暮れるまでな! 夕方になったら帰れ。な?」
「ありがとう! 怖い方のおにいちゃん!」
「ルークと呼べガキィ!」
そしてルークはこういった顔に弱かった。
――――
「もう昼か......こんな目立つ生物の飼い主なんだ。すぐ現れるかと思ったんだが」
それらしき人物は現れていなかった。
ルークは迷子(迷いペット?)じゃない可能性も考え、先程ライが一斉拘束した不法な魔獣取引業者の線も当たってみたが、目の前にいる生物の情報は確認できなかった。
今回拘束できたのはこの街で活動していたグループだけである。要は末端の末端なので、他の街で活動している大元にまで範囲を広げて調べれば何かしらの手がかりはあるかもしれないが、そこまで手を広げる時間も権限も無い。
結果的にその線で真相があるなら捜査は暗礁に乗り上げたも同義なので、犯人が直接乗り込んで来るマヌケムーブを期待する他ないのだった。
「壊し屋のガキ。昼飯、どうする?」
「えーとね......おいしいの!」
フィンの脳裏には、物理的にも心理的にも苦い某女神の料理が焦げ付いていた。そして料理も焦げ付いていた。
「じゃあお子様ランチセットの......ハンバーグ好きそうな顔してるしBで良いか。俺はラーメンで――」
「副長。ジブンはうな重の特上肝吸い付きで」
「ふくちょぉ~。俺はこのウルトラマウンテンヘビースイートパフェが食べた~い」
どこからともなくガリアとライが現れ、ルークの肩を揉み始める。
「奢る訳ねぇだろうが! テメェで払え」
「「いけず」」
「マジぶっ飛ばすぞオイ」
――――
「美味いか?」
「おいしいっ!」
「うにゅっ!」
謎生物とフィンは、満面の笑みで飯を頬張っていた。それを見てルークも自然と心の中が暖かくなる。
「――――で、そこの
「ライ、自分で買ったご飯は美味しいね......」
「きょくちょ......血の味しかしません......」
「黙って食え」
余りの優しさに感極まったのか、二人は泣き出してしまった。
その後、彼らは仕事を放り出し、それはそれは沢山遊んだのだった。
一方その頃トウヤ達は......
「――――依頼......なんですって?」
「はい、迷子になったうちの子を......探して欲しいんです。獣なんですけど......珍しいっていうか......」
「珍しい?」
「鳴き声が......『うにゅっ!』と......」
「なんだそりゃ」
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