第18話 当たり前

「――ってんめぇ......卑怯な隠し球持ってるじゃないの......」


 そもそも魔法がある世界で磁力て......派手さが無さすぎだろ......


「犯罪者捕まえるのに卑怯もクソもあるかよ――――」


「犯罪者はどっちだいこのバカルーク坊!!!!」


 ズン!! と重力が数倍になったような声圧でいきなりフサエが雷を落とす。


「――せっかく直してくれたのにまたバコバコ穴開けやがって! 責任取れないやつが偉そうに喋んじゃないよ!!」


 フサエさんはかなりブチ切れの様子だ......これが心情描写なのか異世界の魔法によるものなのかは分からないが、凄まじい地響きと空気の揺れが巻き起こっている。


「仕方がねぇだろババア!! コイツは! この街で厄介事を起こしたんだ! 俺が黙ってる訳にはいかねぇんだよ!!」


 すかさずルークも逆ギレを発動。死んだ魚に再度血が通う。どうやらこっちが素みたいだ。


 いや待てルーク!? ここで応戦するのはマズイんじゃないか!!?


「男の癖にガタガタ抜かすんじゃないよォ!!!! 直して回るっつってんだからアンタは黙って暇してれば良いだろうがァァァァ!!」


 ルーク怒りの炎は、それよりも大きな烈火によって完全に飲み込まれてしまった。



◇◇◇◇



「――えーと......トウヤ?も傷は大丈夫なのかい?」


「あ、はい! 慣れてるんで!.......この魚の煮付け美味いっすね!!」


「トウヤ......お前マジ次なんかしてみろ......今度こそ牢にぶち込んでやるからな......」


「ルーク坊は口じゃなくて手ェ動かしな!!」


 結論から言うならば、ルークの言っていた俺を逮捕する理由......家屋の破壊の件は俺が修復を行うという事で不問になった。本人は不満のようだけど、フサエさんの一喝が大きな理由だ。

 

 俺も三割位は二度目の破壊に関与していたので、修復の手伝いをした方が良いのではとルークに申し出たのだが......


「お前とは死んでも助け合わん!!」


 と断られてしまった。


――――


「二件目......の人には明日行くって伝えてあるし、今日はゆっくり寝るか......」


「ハァァァァァン!!!!」


 何だ!? 我が家の二階からプリメーラの絶叫と爆発音が!!?


「――どうしたプリメーラ!! 敵襲か!?」


「なんかキッチンが爆発したんですけど!? 欠陥住宅なんじゃない!?」


 真っ黒になったプリメーラが指を指す先には、何をどうしたら料理でこうなるのか分からない、戦場のような惨劇が広がっていた。


「ちょっとトウヤ?......トウヤ? 気ぃ失ってるわ」


 俺の異世界壊し屋生活は、まだまだ始まったばかりなのである。

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