第17話 釘で遊んではいけません

「――その通り! 俺は異世界壊し屋! 店長のトウヤ!! これからまだ仕事があるんだ。とっととそこどけやァ!!!!」


「抵抗か? 良いぜ。俺の得意分野だ――――ッ!!」


 先手必勝! 俺の回し蹴りがルークの首を狙う。


 が、俺よりも早く、彼は動いていた。


 危険を感じた俺は、咄嗟に頭を横へずらす。


 すると俺の頭があった場所。その奥の壁に何かが刺さる音がした。


「......はえぇ。何だ......?」


「喰らえば分かる」


 ルークの二撃目が放たれる。今度ははっきりと見えた。


 釘を投げているのだ。


 なんて事ない普通の釘。


 それをレンガと鉄板で構成された壁をぶち抜く程に力強く。ひび割れ、崩れる事を壁が忘れてしまう位に速く。ただ投げていた。


「警備を名乗る副局長の武器が釘て! 面白武器大会でもやってんのか!?」


「ウチが面白クソ野郎共の巣窟税金泥棒動物園だってのは認めるが――」


「何もそこまでは言ってねぇよ」


「俺はコレが手に馴染むんだ」


 来る! 投げ――――ない!!?


 次は30センチ程の長い釘を逆手持ちしての肉弾戦ッ!!


 変則的な突きが俺の人中、眉間、活殺といった急所を的確に狙ってくる。


 おまけにルークは、一連の打撃の動きの中、一切の予備動作をせずに短い釘を投げてくる。もちろんコレも当たり所が悪ければ致命傷である。


 サイリスのように何をしているのか分からない訳では無い為、幾分かやりやすいのだが......


「――クソッ!」


「当たらなければ、必殺の威力があっても意味は無いだろうが!」


 俺の突きは左手で受け流され、拳から生まれた爆風が室内をめちゃくちゃにしていく。


 そしてすぐさま来る右腕のカウンター!


 ここで攻撃を一発入れる!!


 俺はルークの攻撃を受け流さず、腕を掴み引っ張った。


「何ッ――!?」


 前に体勢が大きく崩れる。


「やっと焦った顔してくれたなァ!!!!」


 横からの膝蹴りがルークの脇腹を抉る。


「............ぐっ...!!!?」


 大きな呻き声と共に血を吐く......が、意識がまだある。硬いなコイツ。


「じゃあもう一発だ!!」


「そう何回も喰らうと思うな!!!!」


 ルークは咄嗟に拾い上げた長い釘で俺の腕を突き刺した。貫通した先からは血が滴っている。


「これぐらいで俺が退く訳ねぇだろうが!!」


 痛い......が! 俺の拳も当たるッ!! 直撃すれば俺の勝ちだ!!


「――言い忘れていたが......俺の使うクギは磁力を帯びているんだ......」


「何!?」


 壁に刺さっていた無数の釘が俺の腕を貫通している釘に引き寄せられるように飛んでくる......避けられな――――


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 全身に釘を打ち付けられたような痛みが走る。

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