第13話 問題解決!

「――これが最後の一本......一気に沢山吸って分かることは、こういうのはちまちま吸うから良いって事ぐらいだったねぇ......火、貰えるかい?」


「ちびっこ魔王、火の魔法使えるか?」


「やってみる!......ふんッ!!」


 魔王の手から噴出された炎は......いや、獄炎と呼ぶに相応しいそれは煙草ごとサイリスを焼き尽くした。


「ハヴァァァァァッ!!?!?」


 ゴロゴロと転げ回るサイリスを尻目に、俺は強力な魔法を放ったちびっ子魔王の頭を撫で回す。


「おー流石ちびっこでも魔王だな。これ俺が鍛える必要あるか?」


「我、“せいちょうき”だから、すぐ強くなるってじいが言ってた!」


「おじさん...煙草に火を着けて欲しかっただけなんだけどな......全身を燃やして欲しいなんて言ってないんだけどな......」


「今のくらって丸焦げになるだけで済んでるアンタも十分流石だよ」


「照れるなぁ」


 照れんな。オッサンの頬を赤らめた顔なんざまじで需要ねぇっての。(黒焦げなので実際は不明だが)


「しかしすげえなこの坊主! の殺気といい、今の魔法といい、本当に魔王だったりしてな! カッカッカ!」


「本当に魔王だぞ?」


「......は?」


 サイリスはおっさんが獄炎をくらった様な顔で完全に静止してしまった。


「いや、だからね? このちびっ子は、魔王なのよ」


「あーあ言っちゃったよ......私しーらない......」


「そのとうり! 我は“げん”まおう! “ジバン・フィンド”! このせかいにくんりんするおうのひとりである!」


 やっと魔王としての口上が言えて、ちびっ子魔王改めジバンはとっても嬉しそうだ。


「かっこいいぞちびっ子魔王~! 本物の魔王みたいでー!」


「待て待て待て!? どういう事だ兄ちゃん......いやトウヤ!? きちんと説明しやがれ!!」

 

 サイリスは人が変わったんじゃないかと思うほど凄まじい剣幕で俺へと詰め寄ってきた。


「えぇ~......」


「えーじゃない! 下手するとお前......世界がひっくり返るぞ!!」


 やばい形相のサイリスに気圧され、俺は全てを話した。


 俺が異世界から転生してきた人間である事。


 そこでゲロ吐いて死にかけてる女が異世界人を転生させる役割を持っていた女神である事。


 ぶっ飛ばす予定だった魔王が余りにも非力だったので、俺が強く育てた後にぶっ飛ばす事。

 

 それと......元の世界でやっていた壊し屋さんをこっちの世界でもやろうとしたらやたらと弊害が多かった事。


 とにかく全てを話したのだった。


「あー......なんつーか......おじさんこれから牢獄生活で良かったなって思うわ。最早一刻も早く入りたいね。ウン」


 そう言うとサイリスは立ち上がり、意識の無い仲間達を抱え始めた。


「そいつらも連れて行くのか?」


「当たり前だろ!......俺に従ってただけとは言え、責任ってモンがあるからな。じゃあな」


「牢獄でも元気でいろよ」


「兄ちゃんも、その坊主......魔王を育てるって事は勇者や竜王、女神様然り様々な勢力が黙っちゃねぇだろう。俺もお前に必ず勝ちに来る。それまで誰にも負けるんじゃないぜ?」


「その時はまた俺がボコボコにしてやるよ!」


 サイリスは「そうか」とだけ残し俺達の元を去った。


 翌日、都市伝説レベルだった最凶の犯罪組織【アンバランス】の幹部が“ファストレア”にて自ら名乗り出た。というニュースが駆け巡った。


「見たトウヤ!? ギルドの張り紙!?」


「見た......サイリスも実はやばいとこのやばい人だったんじゃねぇか......?」


「そこじゃなくて! 独占記事の所よ!」


 顔に押し付けられた紙をひっぺがしながら、プリメーラが指さす所を読む。


「えぇと......?『業の幹部とみられる男は“あの家はおじさんの持ち家だから、好きな様に使ってくれ”などと意味不明な発言を我々広報部に残しており――』ってこれってまさか!?」


「そう! 目下最大の障害だった、壊し屋を始める為の家が出来たのよ!」


「まじかよすげぇえぇ!!」


 明日からずっと雨らしい! 早急に俺が穴を開けた壁を直して回り、異世界壊し屋さんの開業準備を進めなくては!

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