第12話 異世界の強者②
「――――ああ......コレがお前の切り札なら、余裕でぶっ飛ばせるって事は分かった!」
「げ、まじで? やめてくれないかなぁ? だって――――」
「吹っ飛べ!」
俺は意気揚々と講釈垂れるサイリスの腹に拳を撃ち込んだ。
不意打ちパンチとは! 相手が見せた一瞬の油断にグーでぶん殴る必殺のパンチで――――
「ぬぁッ!!!?」
片手で受け止められた!?
「危なかったよ......いやホントに。当たってたらおじさん、負けてたかもね~」
「ぜってぇ嘘だろ......お前強すぎじゃね?」
「この歳になって褒められるたぁ、仕事も頑張ってみるモノだね!」
「っぶない!!」
咄嗟に腕を振り払い再度距離を取る。
俺がいた空間は無数の斬撃で切り刻まれていた。
「っし! なんとか見えるようになってきたな!」
気合いで避けてるだけだからカラクリなんかさっぱりだけどね!
斬撃が体に触れたと感じた瞬間、深く斬れないように少しズラす。
これが俺流“不可視の斬撃攻略法”だ!!
サイリスは避けられるとは思っていなかったのか、目を見開いて煙草を口から落としてしまっている。
「避け――は!? おかしいんじゃないかい!?」
「おかしくない! 避けられてるお前が悪い!」
俺の体を好き勝手切り刻みやがって......絶対に許さないからな。
「
「トウヤ......私には見えないけどサイリスの攻撃を弾きながら突っ込んでるの......?」
「言っただろ、 俺は今最高にイラついてるんだ! だからお前の考えも、やり方も!! 全てを否定してぶっ飛ばす!!!!」
「はァ!? そんな無茶苦茶な――――」
全身の気力を全て込めた一撃が、受ける為に構えられた腕ごとサイリスの腹を貫き、数メートル吹き飛んだ後壁に力無くもたれかかった。
「ぬおっ!!!?? ブッ......」
「見たか魔王......これが俺の...壊し屋さんの戦い方だ」
「すごい! かっこいい!」
ちびっ子魔王は、キラキラとした眼差しを俺へと向けて離さない。
「だろ? お前もこうなれるように頑張るんだぞ!」
「うん!」
「――トウヤ......それでみんな伸びちゃってるこの誘拐犯達はどうするの? どこかに突き出す?」
俺は別にコイツらに恨みがある訳では無い。寧ろ魔王に俺の戦い方を見せる良い機会になったので感謝している程だ。
と言うのは全て建前で、間違いで他人の家五軒壊した後でどの面下げてコイツらを持って行けば良いのか分からないから面倒臭いのだ!!
「うーん......サイリスが起きたらどうしたいか聞いてみよう」
「え、それで普通に帰りたいとか言ったらどうするの?」
「? 普通に帰すに決まってるだろ?」
「アンタそれでまた他の場所で悪事働き出したらどうするつもりなの!?」
「俺に被害が出るようなら何回でもぶっ飛ばすだけだ」
「異世界から来た人はみんな正義感で動くのにトウヤ、アンタって人は......」
「魔王育ててる時点で正義とは言い難いだろ! アッハッハッハッハッ!」
「ほんと変な奴ね......まぁ、アンタが楽しいならそれでいいんじゃない? 私知らないからぁ......」
「とうやぁ......もひもひしないでぇぇ......」
膝に座るちびっ子魔王のほっぺをもにもにしながら笑う俺を見て、プリメーラも苦笑いをするしかないようだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます