第7話 魔王、誘拐されました②

「――――だからやばいんだろうが! 最悪の場合......今世界が滅ぶぞ!!」


 俺の本気の眼をみて、ようやく状況が理解出来たのかプリメーラは震えながら立ち上がった。


「どういう事......? そこまでの力がないからトウヤが強くするんでしょ? なんでそんなに話が飛ぶの――――」


「おじいちゃんから貰った手紙、最後を読んでみろ」


 俺の知る限り魔王の事を一番よく知っているであろうおじいちゃんからの手紙。それの最後の一文はこう書かれていた。


――先述の通り、魔王様はまだ幼い為その力を上手く扱う事が出来ません。しかし、その身体には魔王足り得るだけの、ありとあらゆる魔法が刻まれております。

 魔王様の不安、怒り、悲しみ等といった負の感情が一気に蓄積し、彼のストレスとなると自己防衛本能により一時的な暴走状態に入ります。そうなってしまえば敵味方など関係なく全てを崩壊させてしまうでしょう。

 なのでどうか、魔王様を過度に不安にさせるような事は謹んで頂けると助かります。――


「......これ、まずくない?」


「だからそう言ってるだろ!? もし本当に誘拐されたんだとしたらアイツ不安でいっぱいなはず! 早く見つけないと世界どころか俺達まで危ない!!」


「どうするのどうするの!!? えーと誘拐犯が居そうなのは人目につかないところでえーとえーとぉ!? そんな所いっぱいありすぎて分かんないわよォォォォ!!」


「立って慌てられないからってうつ伏せのままじたばたすんじゃねぇよみんな見てるだろ!!?」


 俺だって出来ることなら全裸で奇声を発しながら走り回ってやりたい所だがそんな事して世界が滅んだらあの世で俺は笑い者だ。


 てか世界が滅ぶってどうなんの? 世界の半分が核の炎に包まれて巨神兵が7日間ってかぁ!? 


「俺が強くする前にそんな事あってたまるかいィィィ!!!!」


 魔王が誘拐されたとして、暴走してなかったらただの子供だ。連れ去る事は容易なはず......人目につかない所......そんな場所一々回ってたら時間切れになっちまう! 


 落ち着け......誘拐犯だって人間だ。余程の事が無い限り理にかなった動きをするだろう。


「行くぞプリメーラ。急ぐから背中乗れ」


「え、そっちは市街地よ? 探すなら郊外の方が――――」


「いや、犯人は絶対に市街地にいる!」


 理由はある。


 木を隠すなら森の中とはよく言ったものだ。人を隠すには人混みの中に行けばいい。


 “人目につかない所”と言うのは、裏を返せば“意識してしまえば目立つ所”なのだから。


「まだ泣くなよ......俺が絶対に見つけてやるからな」

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