第2話 魔王ぶっ飛ばします
みんながこっちを見ている......視線は俺の首より下に集中しているっぽいので、おそらく服装が気になっているのだろう。
元いた世界の機能美を追求した服......学生服......俺からしてみればアンタらの方が変な服装だがこの際それはどうでもいい。
「誰かっ......誰か俺をちょこっとでいい! ちょこっとでいいから案内してくれぇ......」
膝と腕が自然と落ちる。四つん這いの体勢から零れる涙は地面を少しだけ濡らした。
まず第一に勝手が分からない! ほら、アレじゃん? ゲームとかだと村人A的立ち位置の人が『まずはココへ向かってみると良いのじゃ』みたいな感じで教えてくれるじゃん?
それが無い!! みんなチラチラと俺を見るだけ! なんだろう......なんかすっごい恥ずかしい!!
「ふっふっふ......お困りのようですな......」
なっ! ただ膝から崩れ落ちる事しか出来なかった俺に一筋の光明が!
「ありがとうございます、実は――――」
そこで俺の顔を覗き込むのは、ついさっき俺の事を送り出したばかりの女神にそっくりで......そっくりってか本人?
「プリメーラァァァァ!?」
「イキナリ呼び捨てとは頭の高さが天元突破してる気がするけど......来ちゃった!」
んなテヘペロ! みたいな顔して言われても......
「――それで? 転生から5分足らずで何やら行き詰まったみたいだけど......こんな転生者は初めてね」
「『初めて』って、まるで俺の他にもこの世界へ来た人がいるみたいな言い方だな」
「いるわよ? 沢山! トウヤ以外の転生者は大体転生の瞬間から勇者として持て囃されて~、チート能力のお陰でイージーモードで良い生活を――――」
「え、ちょっと待って? チート能力とはこれ如何に?」
「まぁ私達女神からのプレゼントみたいな物ね! 転生者の希望に応じてそりゃあもう色んなチート能力を授けては送りを繰り返して」
「俺、そんなの貰った覚えないけど......」
「あれ?」
プリメーラ、目を逸らすな。ちょっとこっちを見ろ。
「......あげ忘れちゃった!」
「貰い忘れちゃった!」
「いやこんな軽く流して良い問題じゃねぇよぉぉぉぉ!? プリメーラ!? 今ここで受け取る事はできないのか!?」
「さっきまでいた天界じゃないと無理!」
え、詰んだじゃん。泣いていい?
「どおすんだよぉ......」
落ち込むだけじゃしょうがない。何か解決策がある筈だ。考えろ? 脳細胞を全力で働かせて......そうだ!
「魔王を倒しに行こう!」
「早くない!? そういうのはもっとこう、準備を整えたり仲間を募ったりして終盤に行くものじゃ――」
「プリメーラ、お前は俺が給食の好きなメニューと嫌いなメニュー、どっちから先に食べるか知ってるか?」
「嫌いなメニュー......」
「その通り! なぜなら嫌いなメニューは嫌いだから! つまり面倒くさそうな事は先に処理するに限る! 名付けて! “行きたい時に行くが吉。後は野となれ山となれ作戦!” 行くぞプリメーラ! 魔王のいる場所へ案内よろしく!」
「あ、うん......てゆうか、すぐそこってゆうか......ここってゆうか?」
「? どういう事だ?」
「ここ、魔王の支配領域。街の名前は“エンドランス”ね」
「な......何ぃぃぃぃ!?!?」
トウヤの異世界壊し屋生活、最初から
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