【第一部完結!】不遇転生から始まる最強魔王育成記〜魔王がちびっ子で弱かったので最強に鍛えます〜

ちょっと黒い筆箱

第一部 異世界壊し屋と魔王の師匠、爆誕

第1話 死にました。転生します

 気が付くとそこは宇宙のような、何も無い空間だった。


「あれ......俺、何してたんだっけ?」


 頭がぼーっとして良く思い出せない。


 そうだ、確か学校終わりに親父の事務所へ寄ろうとしてそれで――――


~~~~


『ふぃー疲れた――――え?』


 居眠り運転のトラックが突っ込んで来たんだ。


『うわぁぁぁぁ!!!!』


――――それで......


『危ないなぁ! 気をつけてよ!!』


 あ、違う、その時は間一髪トラックがブレーキを踏んでくれて助かったんだ。


 そうだ。確かのその後......


『――――お前らみんな死ねばいいんだぁぁぁぁ!!』


『いやぁぁぁぁっ!』


『危ない――――ッ!!』


 そうだ......通り魔に襲われていた女の人を庇って刺されたんだ......


『ぐぁぁぁぁっ......ぐうっ......』


 血の止まらない腹部――ってあれ? いや別に血を出した覚えは無いぞ? 


 あっ! そうだそうだ!


『これは......腹筋に包丁が通ってない寧ろ包丁が曲がっている......! あ、すみません皆さん! ご心配なく! じゃあ私はこれで――――』


 そうそう! 日頃から鍛えていたお陰で怪我せずに済んだんだよ!


 あれ? じゃあ俺ってそもそも死んだのか? いやもっと思い出せ――――


『いやー、あんな事もあるんだねぇー』


『ケェェェェェェン!!!!』


『なっ......離せコノぉッ!!!!』


 そうだ......街中で全長20メートルはあろうかというオオワシに連れ去られたんだ! 


~~~~


「そのまま鳥の餌になって死んだって訳か......」


「随分とトリッキーな死に方ね」


 いきなり話しかけられた!? よく見てみると少し向こう側に誰か女の人が座って......いやそんな事より!!


「それは......ッキーをけたんですか?」


「一旦黙って? あと早くこっち来て、こっち側の椅子にかけて?」


「あ、はい。失礼します......」


 宇宙っぽい空間......明らかに只者じゃないオーラの女の人......


 これは明らかに!


「異世界てんせ――――」


「たった今貴方は死に――――」


「「あっ......」」


 被った!!!! 死ぬ程気まずい!!!!


「あの......レ、レディーファースト? 的な? 先にどうぞ......」


 俺の方はどうでもいいので後回しで良いのだ。


「あ、そう? では失礼して――コホン!」


 謎の女性は軽く咳払いを挟み、仰々しい口上を述べ始めた。


「たった今貴方は死にました! しかし怖がる事はありません! 貴方にはまだ未来が残されています! それはそう! 魔王が支配する異世界へと赴き......世界を救うと言う使命があるのです!」


「おおおおおお!!」


「そして......私の名はプリメーラ......貴方のような人間を異世界へと送る役目を持った女神プリメーラよ!」


 やっぱり......と言っては変かもしれないがやっぱりそうか。


 どちらかと言えば西洋風の顔立ち、最早着てないんじゃないかって位薄々のドレス、状況的なあれを含めてこの美人さんが女神で安心した!


「えーとあなたの来歴はと......」


 プリメーラはどこからともなく紙を取り出し眺め始めた。


 よく周りを見てみれば、俺と似た様な感じで椅子に座らされ、紙とにらめっこしながら女神? と話している人が他に何人もいる。あっちの話は聞こえないが......なんだかお役所みたいだ。


「あの、それなんですか?」


「これ? 人生履歴書。まぁ早い話があなたの人生史ね。えーと......四木 透也ニニギ トウヤさん? 年齢17歳。私立寸薔薇倫ずんばらりん高校へ通いながら......何この職業【壊し屋】って?」


「その名の通り、色んなものを壊す仕事を父の手伝いでしてました。パソコンのデータとか......」


「まぁ聞かなくても全部履歴書に書いてあるんだけどね――――へぇ、面白いわね! よし決めた! アンタ、異世界でも壊し屋やった方が良いわよ!」


「え、でも需要と供給が......」


「良いの良いの! 女神様からのありがたーいお告げだと思ってね? ほら!」


 そこまで女神様が言うならやってみるか! 上位存在なら流されてみるのもアリだろ!


 トウヤは適応と順応が早かった。


「分かりました! できるかどうかは分かりませんが......異世界で壊し屋、やってみます!」


「いい心がけ! じゃあ魔王が支配する異世界へ飛ばすから、頑張ってちょーだい!」


 この言葉と共に、俺の体は眩い光の柱に包まれた。


 

◇◇◇◇



『見慣れない景色......中世ヨーロッパ風の街並み! 極めつけは屈強な冒険者! これが異世界! すげぇぇぇぇ!!』


 トウヤの騒ぐ姿を、プリメーラはキラキラとした瞳で覗き見ていた。


「楽しそう......私も行こうかなー......って思い立ったが吉日!! セグリス! 後よろしく! 私トウヤの後追ってみる!!」


 プリメーラはそう言い残すと、慌ただしく着替え、自身も光の柱へ吸い込まれて行った。


「先輩がもう行っちゃったのです......ちゃんと片付けてから行って欲しいのです......」


 食べかけのポテチ、一口分だけ残された飲みかけのコーラとお茶数本、散らかしに散らかされた書類の山をため息を吐きながら、プリメーラと似た様な羽衣を身に着けた女の人が片付け始めた。


 “セグリス”と呼ばれたもう一人の女神は、プリメーラの後片付けをするため、トウヤの人生履歴書へ手を伸ばした。


「――――? 職業、壊し屋......『人から化け物まで、何でも壊します』壊し屋本舗ニニギノミコト......さっきと言ってる事が違うです――――あ、でも次の人が来てしまうのです。早く片付け終わらせないと」


 トウヤの異世界壊し屋生活は、まだまだ始まったばかり......?


――――あとがき――――


第一部完結してます! レビューや感想がいただけると励みになるので、少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひよろしくお願いします!

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