福引

 僕たちが買い物をしている商店街で行っている福引。

 街に出来た大型ショッピングモールにも負けず、徹底的に子供並びに学生に優しくの姿勢を取り続けた結果、今でも最盛期を謳歌している商店街。


「おっ、坊主じゃねぇか。今日は彼女連れか?」


 千夏と腕を組んでやってきた僕に福引のおっちゃんがからかいの意思を込めながら軽口をたたいてくる。


「ただの幼馴染であることはおっちゃんも知っているでしょ?ということで福引引きたいんだけど」


「あいよ!お前さんは数が凄そうやなぁ」


「まぁね」


 僕は持っていた福引のくじを渡し、続いて千夏も持っていた五枚を渡す。


「えっと……券が全部で三十二だな。お二人さんは特別で四十回引いていいよぉー」


「ありがと、おっちゃん。じゃあ、二十回ずつ引くか、先に引いて良いよ」


「ありがと!じゃあ、引いて行っちゃうよ!」


 ガラガラへと手をかけた千夏が福引を回し始める。


「六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ……」


「えっ……あっ、え?」


 出てくるのは全部真っ白な玉。


「六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ……」


「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュ!六等、ポケットティッシュッ!!!」


 最終的に出てきたのはニ十個すべて白、六等のポケットティッシュであった。

 それはもう見事な雪景色であった。


「どうしてぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!」


 これ以上ないほどの大爆死をしてみせた千夏が崩れ落ちる。


「お、おっかしぃーな?そんなに六等入っていないんだけどぉ。全部で三十個しか入っていないから……もう一人で三分の二を引いた計算だぞ?確かにこれまで


 それを見ておっちゃんが苦笑しながら困ったような表情を浮かべる。

 

「どんな確率?」


 法外なまでに白玉が入っているというわけではないらしい。全部で三十個しかない白玉のうち、二十個を全部千夏が引くというただの奇跡を見せつけただけであったようだ。


「えぇ、そんな運の良さいらないよぉ」


「まぁ、任せろ。仇は僕が取ってやる」


 崩れ落ちる千夏をよそに僕はガラガラを手に取って回し始める。


「あっ、金だ。一等」


 そして、一回回して出てきたのは金色に輝く一つの玉であった。


「「えっ!?」」


 一発で大当たりを引き当てた僕に


「お、お、お、大当たりぃー!」


 そして、福引を取り仕切っていったおっちゃんが手元にあったカランカランと音の鳴る鐘を鳴らし始める。


「温泉旅行ペアチケット!!!」


「おぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 これまで崩れ落ちていた千夏はそれを聞いて意気揚々と立ち上がるのだった。


 


 あとがき

 新作です!

 読んでくれると嬉しいです!

『悪役貴族に転生したけど魔法を極めたい!~努力なしでも最強クラスの悪役が一切の悪事を行ずに魔法馬鹿の最強魔法使いとなった結果、ゲームのヒロインたちが押し寄せてくるようになった件~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330668194323937

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