お食事

 結局のところ、日本人が取るべき食事はお米と魚。それ以外の食事は邪道。日本人に非ず。 完全に言い過ぎである。


「ちょうど空いててよかった」

 

 僕と神楽はかなり空きの多いお店の席の一つへと腰を下ろす。

 ということで、僕が神楽とやってきたのは近所の回転寿司。

 個人的にお寿司がやっぱり最強だと思う。ステーキとかハンバーガーとかピザとかも美味しいけどお寿司なんよ。


「……まぁ、こんな時間だし」


「それは、そう」


 僕は神楽の言葉に頷く。


「予算は?」


「……私は金持ち。小遣い後」


「奇遇やな。僕もお金はあるわ……ちょっと屈辱的なことをして稼いたお金がな」


 僕が女装して敵をボコすだけの動画は中々の再生回数が回っているおかげで広告収入が入ってくるのだ。

 なんか知らんけど、大物格闘系の動画投稿者が催している喧嘩大会に誘われるほどには有名である。

 

「……可愛かったよ」


「断じて触れるなよ?たとえお前らであっても普通に許さん。ブチギレるから」


「……ふっ」


「鼻で笑ったな!?今!」

 

 僕は鼻で笑いやがった冬華へと怒りの声を上げながら、一番好きなお寿司のネタであるほたてさんを取る。

 ほたて漁師さんには悪いけど、中国がほたてさんの輸入を辞めてくれたおかげで、ちょっとずつ普通のスーパーのほたてさんとかも安くなってくれているので非常にありがたい。


「……さぁーもん」


 そして、僕の前にいる冬華はウキウキとした様子で自分の好きなサーモンを取っている。

 最近、しょうゆペロペロニキなどを始めとする人たちによるテロ行為があったりしたこともあったか、回転寿司なのに回っていなかったりするところも多々見かけるが、それでもやっぱり回っていてほしい派である、僕は。


「……美味しい」


「ねー。やっぱり日本人だしお寿司食べないとね」


 冬華と常に共にいる僕たちくらいではないとわからないくらいの微細な表情の変化を見せて、幸せそうにしている冬華の言葉に頷く。


「……でも、高い」


「いやぁー、それはそう。もうちょっと安くなってほしいよねー。お寿司」


「……降れ、魚。天より」


「それはちょっと生臭そうで嫌かもしれない……」


「……そうは、そう」


 僕の言葉に少しだけ眉を潜めながら冬華は頷く。


「……甲殻類、やばい」


「絶対にやばいね、それは」


「……だから、今。ここで食べることで満足してやろー」

 

 冬華がちょうど回転レーンに流れていた海老を手に取る。


「あっ、待って。僕もほしい」


 それを見て僕も海老を食べたくなったのだが……。


「……あっ」

 

 僕たちが取るよりも前に海老はレーンの先に流れてしまった。


「頼むかー」


 それを見て僕は寿司を頼むためにタッチパネルへと手を伸ばすのだった。

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