テスト二週間前
一週間の学校が終わって土曜日。
「あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ」
僕は自分の部屋のベッドで項垂れていた。
「定期テストだぁ。すぐ目の前に迫る定期テスト嫌だよぉ」
その理由は単純。
すべての高校生の敵である定期テストである迫っているからである。もう時期はテスト二週間前。
テスト範囲が正式に発表されたところだ。
「蓮夜は良いじゃん。頭良いんだから。テストで一桁から外れたことないんでしょう?」
そんなベッドの上で嘆いている僕に対して当たり前のように態度で僕の部屋に入り浸っている千夏が不満そうに告げる。
ちなみにではあるが、当たり前のように春香と冬華も僕の部屋にいる。
「平均点ギリギリで真面目に勉強頑張らないと赤点だってあり得る私は怖くて怖くて仕方がないわ……」
「いや、別に上位勢も楽じゃないから……順位を維持するために阿保みたいに勉強しないといけないし」
「テストなんて日々の授業の予習復習をやっておけば満点なんて簡単でしょう?」
心底嫌そうに告げる僕に対してさも自分は余裕ですよアピールしている春香。
「嘘つけ、お前も毎日阿保みたいに勉強しているやんか」
そんな春香の言葉をバッサリと切り捨てる。
春香のお母さんからテスト週間は家にこもってずっと勉強しているっているのを密告されているからな。
お母さんコミュニティがある中でこちらのプライベートなんてものは存在しない。
「……な、な、な、何を言っていることやら」
手を震わせながら僕の部屋に持ち込んでいる彼女愛用のティーカップへと口をつける春香を僕たち三人は生暖かい視線を向ける。
変に強がって見栄を張るのは春香の癖であり……そして、その見栄に負けないように最大限努力するのも春香だ。
彼女は常に学年一位。並大抵の努力ではない。
ちょっとだけ傲慢で見栄っ張りだけど、それを超えるほどに頑張り屋さんなところが春香の良さである。
「いやぁー、それにしてもテスト週間嫌だぁー、勉強したくないー」
「わかるぅー」
僕と千夏は共にベッドの上に転がりながら不満を垂れる。
「……そうね」
そして、春香もそれに小さく同意してくる。
一位をずっと保持している彼女への重圧もなかなかのものがあるのだろう。
「……みんな甘い」
そんな中で、これまでずっとだんまりを決め込んでいた冬華が得意げな笑みを漏らした後に前回のテスト用紙を広げる。
「……慌てるのはここから」
そのテスト用紙に書かれている点数はすべて赤点であった。
一番ひどいのが数Ⅱ・B のテストでその点数はなんと驚愕の八点である。ちなみに二百点満点だ。
「おいおい!?普通にヤバくないか!?」
「えぇ……?進級できるの?」
「……一桁?え?一桁?どうやったらそんな点数取れるのかしら?」
冬華の圧倒的な点数に僕たちは驚愕する。
普通に最下位レベルの点数である。
「こんな点数を取っているのによくうちの高校に入れたわね?そこまで名門というわけではないけど、一応偏差値60は超えているのよ?うちの高校」
うちの高校は普通に偏差値が高い……入るならそれ相応に勉強が出来る必要がある。中学三年生の頃の冬華は普通に頭が良かったと思うのだが。
「……燃え、尽きた」
「はぇよ!?まだ高校なんだが!?」
真っ白に燃え尽きた様子の冬華へと僕はツッコミの言葉を入れる……まぁ、冬華は最初からは真っ白ではあるけど。
「……ヤバい」
「どう考えてもヤバいやろ」
ちょっとだけ焦った表情を浮かべている冬華に僕は真顔でツッコむ。
「……教えて、勉強」
そんな僕の服を控えめに掴みながら冬華が控えめに……いや、いつも通りの態度で勉強を教えるようせがんでくる。
「まぁ、良いよ。教えてあげるよ。勉強」
僕は冬華の申し出をサクッと引きうける。
「……ありがとう」
「良いってことよ。大したことじゃないし」
お礼を言う冬華に対して僕はサムズアップで答える。
「うぅー、私も教えて欲しいけど既に友達と勉強する約束しちゃっているしなぁー」
そんなやり取りを端から見ていた千夏が心底悔しそうな表情を受けべながらそう話す。
見た目が金髪ギャルでコミュ強の千夏は非常に友達が多い。
「そっちの約束を優先してよ。僕たちとかいつも一緒にいるんだし。他の友だちも大事だよ……なぁ、冬華?」
「……わからなぁい」
ちなみに冬華のコミュニティはここだけである。
「じゃあ、僕と勉強会するか」
「……うん、お願い」
僕の申し出に冬華が頷く。
「そんなことしている余裕あるのかしら?そんな様子で私から一位の座を奪うことが出来るのかしら?」
冬華との約束を聞いていた春香がツッコミを入れてくる。
「冬華に教えながらでも一位を取って見せるよ。他人に教えるってのもれっきとした勉強法だよ」
僕と春香は常に学校のテストの点数を競っている中である……まぁ、今のところ全敗ではあるけど。
でも、今回はこれだけヤバいヤバい言っておきながら自信あるんだよねぇ。
「ふふふ。ならその実力を見てもらいたいわねぇ?」
「今回こそ吠え面をかかせてあげるよ」
僕はこちらを高みから見下ろしてくる春香に対して自信満々な態度で言葉を返すのだった。
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