014
今日の僕はお疲れモード。
冒険者ギルドに併設されてる酒場でグダってます。
だって昨日は大変だった。
黒ローブ野郎達の排除。
火事の消火活動。
人命救助。
ついでに町の清掃。
気が付いたら夜でしたよ。
これをボランティア精神でやりきった僕えらい。
まあ、全部やる必要はなかったんだ。
だけど他人が働いていれば途中で抜け難い。
どう考えても気まずい。
だから頑張った。
誰か褒めてくれてもいいのよ?
「ディス様。誰かこっちに来ますよ」
ジュースを飲んでたポチからの警告。
何だろうと首を動かすと、そこには猫耳のお姉さん。
いつもと違って真面目な顔で僕を見てます。
「ギルドマスターがディスさんをお呼びです」
なんか僕やっちゃった?
もしかしたら昨日の活躍がバレちゃったかな?
説教だったら嫌だな。
「じゃ、ポチとタマも一緒に」
「ダメです。ディスさんだけでお願いします。」
「……分かりました」
ここで断る選択肢は無い。
ラノベを熟読している僕からすれば、これもイベントの一つだろう。
それが例え説教でも。
「ギルドマスターは中でお待ちです」
「そうですか」
猫耳のお姉さんに連れられて僕は応接室に来た。
とりあえずノックしてもしもーし。
「入れ」
「入りまーす」
扉をゆっくりと開けつつ、中の様子を窺う。
部屋の中には筋肉モリモリマッチョマンの獣人が椅子に座ってた。
立派なたてがみだしライオンの獣人かな?
威圧感がすごくて近付くのを躊躇ってしまう。
……というかギルマスはマッチョマンである必要があったりするの?
僕は訝しんだ。
「まあ、座れ」
「はい、座ります」
まるで犬の芸の如く即座に座る僕。
だってこのギルマス怖いんだもん。
なんだか見えない圧をビンビン感じますよ。
「先に言っておく。これから話すことは他言無用だ」
「はい、誰にも喋りません」
何で念押しするようなことを僕に話すんですかね?
とりあえず説教ではなさそうだが、厄介事は勘弁してほしいの。
「先日のハーベス襲撃犯から情報を聞き出した」
「拷問したんですね分かります」
「人聞きの悪いことは言うな。尋問しただけだ」
「あ、はい」
僕は内心思ったね。
絶対こいつらやりやがったなってさ。
獣人怖いな……関わり合いたくない。
「聞き出した情報によると襲撃犯の仲間が王都に潜伏しているらしい」
「へえ、ヤバいじゃん」
「うむ。間違いなく奴らは近々王都でも騒ぎを起こすつもりだろう」
「そうですか。じゃ、話は聞きましたので僕はこれで失礼します」
「待て……これからが大事な話だ。私はお前に依頼をしたいのだ」
嫌じゃ嫌じゃ。
僕は面倒事に巻き込まれるのが嫌じゃ。
そんな僕の気持ちなんて目の前のギルマスが理解してくれるはずも無し。
ギルマスは話を進めるのだった。
「この手紙を王都のギルドマスターまで運んでもらいたい」
「なんで僕? もっと適任がいるでしょ」
「襲撃犯の残党による破壊活動が再度起きる可能性がある。ハーベスの冒険者はなるべく動かしたくない」
「……外様の僕に頼むことじゃないですよね? それにほら、僕って獣人じゃないし」
「昨日のお前達の活躍は知っている。だからこそ、ある程度の信用はしている」
……うーん、信用か。
冒険者や住人に事情聴取したんだろうけど、それを鵜呑みにしちゃ駄目だって。
僕は善良なモブですよ?
「ちなみに仕事の報酬はなんですかね? タダ働きは嫌です」
「依頼を受けるなら今日からお前達はDランクに昇格。それに金貨十枚でどうだ?」
「やだ……破格」
手紙を運ぶだけでこの報酬。
これは……もしかしたら危ない案件なのかもしれない。
我が身可愛い僕としてはデンジャラスな事案は避けたいです。
「もちろん……引き受けてくれるな?」
おぅふ、ギルマスからのプレッシャーが半端ない。
効果音があったら絶対ゴゴゴゴって感じのやつが浮かび上がってる。
非常に断り辛いですよ。
そもそもこういうのは断ったら後が怖いのはラノベで予習済み。
ということは、元から選択肢は一択じゃん。
「喜んでやります!」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいぞ」
こっちは言わされているんです。
これも全部怖いライオンの獣人の仕業なんです。
「これが運んでほしい手紙だ。くれぐれも失くさないようにな」
ギルマスが蝋で封印した手紙をくれた。
失くすと絶対殺されると思う。
こんな物騒なものはさっさと運んでしまおう。
「それじゃ、今度こそ僕は失礼しますね」
このままここにいたら胃がストレスでダメージを負ってしまう。
僕の内臓はデリケートなんだよ。
「ん?」
さっさと部屋から出ようとしたその時、扉が勢いよく開いた。
で、ずかずかと部屋の中に入ってきたのは……猫耳のお姉さん?
いや、よく見たら毛の色が違うような?
「妹のメルシーから話は聞かせてもらったわ!」
「キャシーか……部屋に入る時はノックをしろ」
部屋に入ってきたのはキャシーっていうらしい。
メルシーって確か受付の猫耳のお姉さんだよな?
あの人を妹って呼ぶこの人はきっとお姉ちゃんキャラ。
「私も一緒に行くわ! ポチちゃんとタマちゃんを放ってはおけない!」
「……とにかく座れ」
ギルマスが冷静に対処。
これはかなり慣れてるやつだ。
「もう一度言うわね。私も一緒に行くわ!」
「ダメだ。Bランクを遊ばせる余裕はない」
ギルマスはダメだよって言ってる。
まあ、問題行動は見過ごせないよね。
というかキャシーさんってBランク冒険者なんだ。
人は見かけによらないな。
「私は王都の地形に詳しいですし、顔も利きますよ!」
「そうかもしれんが……」
「はい、決まり! じゃあ行ってきますね!」
ばたばたと部屋から出ていくキャシーさん。
溜息をつきながら額に手を当てるギルマス。
面倒事が増えたような気がしてる僕。
「……報酬上乗せしてくれません?」
「ダメだ」
「ですよねー」
悲しいかな。
いつだって僕は面倒に絡まれる。
これも全部【運命に翻弄される者】って称号のせいなんだ。
「僕は帰ります。手紙は必ず渡すんでご心配なく」
「うむ、頼むぞ」
もうこれ以上の厄介事は勘弁な僕はポチとタマを拾って宿屋へ直行。
ポチとタマに事情を説明した。
「その王都までは徒歩で移動するんですか?」
「いやー距離的に馬車かな。歩きは無謀でしょ」
王都までの距離はすんごく遠い。
言い方が曖昧な理由は、ズバリ地図のせい。
この世界の地図って手描きなんだよね。
それも測量したわけでもない雰囲気重視の描き方。
そんな地図信用できるかってんだ。
だから馬車で移動するのが一番いい方法だと思う。
手紙を渡すのは早い方がいいだろうし、移動速度はスピード重視だ。
「旅をするとなるとお金が必要ですね。主に食費が」
「食費がかかるからなぁ……誰かのせいで」
僕とポチが視線が交わる場所にはタマの姿。
タマはベッドで寝そべりながらポテトチップスみたいな食べ物をポリポリ食べてる。
ちなみにポテトチップスっぽい食べ物は塩味です。
「おいタマァ! それは後で食べようと思ってたポテチだぞ!」
怒りの雷がタマに落ちるが、タマは何食わぬ顔。
くそ、ドラゴンの分際で上位種族ぶりやがって。
「このイモ美味いッス!」
タマはニコニコ顔でポテトチップスを食べ続ける。
どうやらタマには待てを教える必要がありそうだ。
このままじゃタマは我儘な子に育っちゃう。
それは天国にいるタマのママンに申し訳ない。
タマは真面目な子に教育してみせるぞ!
「というわけでお説教の時間だコラァ!」
こうして僕は一晩中タマに説教をしました。
タマは途中で寝てたような気がするけど、言いたいことは言ったので僕はすっきりです。
とってもデスティニー!~運命に翻弄される僕~ まっくろえんぴつ @gengrou
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