006
とりあえず図書館で目的は達成。
町の名前もフリードということが分かったし周辺地理もばっちりさ。
というわけで僕とポチは図書館を出た。
次の目的地は……冒険者ギルド。
ラノベで何度も登場する冒険者達を纏める組織の総称。
この町の地図で存在を知ってから興味ビンビンですよ。
「ディス様。冒険者ギルドってどんな所なんですか?」
「さあ? 着いてからのお楽しみかな」
もしかしたら僕の想像してるものとは違ってる可能性あるしね。
ポチに知ったかぶりするのはやめよう。
大通りを歩いていくと、でっかく冒険者ギルドと書かれた看板を発見。
どうやらあそこが冒険者ギルドの建物らしい。
「さっきの建物よりも小さいですね」
「まあ、この町の図書館は特別大きいんだよきっと」
ポチと会話をしつつ、冒険者ギルドの扉を開いた。
扉は蝶番に油を注してないのか盛大に軋んだ。
これで注目集めちゃったかと思ったけどそうでもなかった。
建物の中が騒がしいせいで、全く気付かれていない。
なので普通に中へ入っていく。
「騒がしいのは嫌いです」
「まあ、そう言わずに」
ムスっとした顔のポチをナデナデしてやる。
これでポチの機嫌が直れば御の字。
「む? 近付いてくる連中がいる」
僕達に近付いてくるのは完全にヒャッハーな三人組。
やめて、乱暴する気でしょテンプレ通りに!
「へっへっへ。上玉の嬢ちゃん達じゃねえか」
「俺達は子供だろうが構わず食っちまう男だぜ」
「おじさん達といいことしようや」
もしもしポリスメン?
凶悪な面した犯罪者がいるんですが?
流石ファンタジー世界。
こういう輩も普通にいるんだな。
「寄るな。臭い」
おぅふ、ポチってば辛辣。
僕ならもう少し丁寧に言いますよ。
「なんだとぉ! ガキのくせに生意気だな! わからせてやる!」
ヒャッハー三人組の一人がポチに向かってわからせ宣言。
対するポチは戦闘態勢になってる。
そんな一触即発な状況で、僕は【鑑定】を使っていた。
いやほら、相手の実力を知るのって大事なことだし?
もしあいつらが実力者だったら本気で逃げる必要あるし?
「……なんだ雑魚じゃん」
僕の【鑑定】で丸裸にされたヒャッハー三人組のステータス。
その驚きの数値は……なんと最高値で50ちょっと!
ちなみに僕達のステータスはこうだ。
名 前:ディス
種 族:シャドウヴァンパイア
レベル:3/40
状 態:通常
筋 力:169
体 力:153
俊 敏:216
魔 力:412
運命力:4235
スキル
【創造】【鑑定】【隠密】【気配感知】【血液操作】
【闇魔法】【偽装】【コピー&ペースト】【解読】
称 号
【運命に翻弄される者】
名 前:ポチ
種 族:ムーン・ウルフ
レベル:16/30
状 態:通常
筋 力:145
体 力:112
俊 敏:205
魔 力:163
運命力:263
スキル
【気配感知】【月魔法】【人化】【偽装】
称 号
【忌み子】
今の僕とポチなら勝てますねこれは。
これなら安心。
「ふむ、どうするか」
こういう時は相手をボコボコにするのがラノベでよくある展開だ。
力には力で対抗する。
当たり前だよね?
しかし、力を発揮するには場所が悪い。
僕達がモンスターだってばれないようにしないと。
つまり目立ってはいけない……少なくとも今はね。
「あ、すみませんでした」
素早くポチの腕を握って、颯爽と立ち去る僕。
そのまま数分間走って路地裏に入ったところで足を止めた。
ポチは納得いかないといった感じ。
可愛い顔を赤くさせて僕に迫ってきた。
「ディス様! 何で逃げたんですか! あんな奴ら私だけでも……」
「まあまあ、ここならボコっても怒られないからね?」
「え? それってどういう意味ですか?」
「フフフ。つまり……ああいうことだ」
僕が振り返るとそこにはさっきのヒャッハー三人組の姿が。
完璧なタイミングでの登場ありがとうございます。
「はあ、はあ。逃げられると思ってんのか?」
「それで、げほ、逃げ切ったつもり、かよ」
「ぜえ、ぜえ……逃がさねえぞ」
相手の息切れ具合が酷い。
肩で息しながら両膝に手をついてる。
でも威勢は全く衰えてないね。
「……ああ、なるほど。そういうことですか」
ポチも理解したようだ。
ここが人目を気にしないでいい場所だということに。
誰も見てないんなら……罪は隠せる!
「ポチ、やっちゃえ」
「どのくらいまで?」
「半殺しで」
僕の合図でポチがヒャッハー三人組に襲いかかる。
哀れ、ヒャッハー三人組は屍に……はなってない。
流石に町中で人殺しは不味いですよ。
僕だってそのくらいは分かります。
「財布はもらっていく。悪いがこっちも生活があるんでな」
気絶してるヒャッハー三人組から財布をもらった。
中身はあんまりなさそう。
貧乏かよ。
「よし、冒険者ギルドに戻るか」
ちょっとした臨時収入が得た僕達は冒険者ギルドに戻った。
今度はちょっかいを出すような人はいないようでよかった。
でも周りの連中からはいろんな視線が僕達に向けられてる。
あんまり注目はしないでほしい。
僕は善良なモブです。
「そういえば、ディス様はここで何をするつもりなんですか?」
「まあ、見てろって」
僕は堂々と受付まで歩いていき、そこで受付のお姉さんと対峙する。
受付のお姉さんの営業スマイルが眩しいぜ。
「あ、あにょ!」
「はい、ご用件は何でしょうか?」
あ、緊張のあまり発音がおかしいことに。
やだ……ポチの目の前で恥ずかしいよ。
「えっと、その、冒険者になりたいんですけど」
「それでは用紙に必要事項を記入してください」
受付のお姉さんは営業スマイルのまま僕に紙を渡してきた。
この紙は個人情報を書くための物ですね。
紙を二枚渡す辺り、この受付のお姉さん分かっておられる。
「うーん……読めるけど書けない」
僕の【解読】は文字を読めるようにしてくれるだけ。
どうせなら僕の書いた日本語を自動翻訳して紙に書いてくれればいいのに。
「代筆お願いします」
ここは素直に代筆を頼んだ。
これからも代わりに文字を書いてもらう機会は多いかもしれない。
名前くらいは書けるようにならないとな。
「これで登録は完了です」
「そうですか」
「それではこれから冒険者について少々説明させていただきます」
「マジですか」
それから僕は受付のお姉さんから長い説明を聞くことに。
まあ、基本はラノベ知識で知ってるようなことばっかりだった。
アルファベットでランク付けは基本中の基本だよね。
ちなみに僕達は最低ランクのFからスタート。
目指せ最高ランクのS!
「説明は以上です。では、簡単な依頼を紹介しますね」
説明が終わると受付のお姉さんはおすすめの依頼をいくつか教えてくれた。
僕はその中で簡単そうな依頼を受けようとした……その時。
「……おや? 急に静かになったぞ?」
騒がしい室内が静まり返った。
なんでかな?
きょろきょろ周囲を見るとみんなが一点を見てた。
僕もそっちを見てみるとそこには筋肉モリモリマッチョマンが立ってた。
ラノベ知識で僕は知ってる。
こういう時に現れるのはギルドマスターか高ランク冒険者だって。
まあ、今回はギルドマスターじゃないかな。
だって着てる服装が冒険者っぽくないし。
「緊急の依頼だ! 内容はモンスターの大群からフリードを守り抜くこと! 命知らずはついて来やがれ!」
おう、ずいぶんと迫力ある声してるじゃん。
思わずビビりそうになったぞ。
「ディス様。あれ何です?」
「ギルドマスターって奴じゃない? 常識的に考えて」
「はぇ……ディス様物知りですね」
「それほどでもない」
僕とポチがひそひそ話してる間にギルマスに続いて冒険者達が建物の外へ出ていく。
みんな武器を握って目がギラついてますね。
さっきの話から察するにみんな緊急の依頼を受けるってことかな。
普段から酒ばかり飲んでいそうな連中だけど大丈夫なの?
正直不安だ。
「私達はどうします?」
「そうだな……面白そうだし行くか」
僕は優柔不断じゃない。
すぐに物事を判断できる頭脳を持っているのだ。
そんな優秀な僕はこの依頼を受けるべきだと判断。
ポチと一緒に町の外まで移動した。
「どうやら命知らずはこれだけらしいな! どいつもこいつもいい度胸してやがる!」
ギルマス流の激励から始まり、依頼内容が説明された。
なんか遠くに見える山からモンスターの大群が押し寄せてきてるらしい。
それをスタンピードって言うそうな。
周りがざわざわしてるから結構有名な現象なのかな?
まあ、僕にもラノベの知識で心当たりはあるが。
今回は前衛と後衛に分かれてモンスターを迎え撃つみたいだ。
Fランクの冒険者である僕とポチは後衛に配置された。
「守るだけなんてつまらない」
「仕方ないよね。諦めろ」
「でもディス様……私、戦いたい」
うっ、そんなウルウルした瞳で見つめられると困る。
僕そういうのに弱いの。
「それじゃ、こっそり抜け出して前線に行くか」
「そうしましょう!」
ポチ……獰猛な子!
やっぱりオオカミなんだなって再認識。
所詮ポチは残虐非道のモンスターなのだ。
ペットだけど付き合いには注意しないと。
「さて、戦いが始まるまで大人しくするかな」
僕は壁に背を預けてモンスターの大群を待つことに。
フフフ……強者は動じずに堂々としてるものなのだよ。
「おい新入り! ぼさっとしないで戦う準備しろ!」
「あ、はい」
悲しいかな。
僕はFランク冒険者。
先輩には逆らえないのだ。
というわけで僕はモンスター襲撃までの間、馬車馬のように働きました。
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