004
どうしよう。
目の前の木に勝てる要素があまりに少ない。
とりあえず目指せ短期決戦っていうのが最善だと思う。
素早さで勝ってるしいけるって一瞬思ったけど相手は木。
そもそも動かないような奴に速さで勝ってるって言ってもね?
「ディス様! 木の枝が動いてます!」
木と対峙してると枝がワサワサと動き始めた。
どうやら先攻はボスからのようだ。
素早さで勝ってるのに先手を取られる奴がいるらしい。
そうです僕です。
「危なっ!」
木の枝が勢いよくこっちに向かって伸びてきた。
枝の先は鋭く尖っててとっても危ない。
もしかしなくても刺されば体を貫かれると思うの。
普通にデンジャラス。
当たり所が悪ければ即死だよこれ。
これが鬼畜の所業ですか?
「ポチ、あれに当たるんじゃないぞ!」
「はい!」
とりあえずポチとは別の方向へ飛んで木の枝を回避。
それから木の周りをぐるぐる走る。
レベル上げで培った戦闘経験から僕はボスの恐ろしい所を看破した。
ボスの攻撃のヤバい所は、威力でも速さでもなく密度。
数撃てば当たる戦法は卑怯だって。
「おぉ!?」
走っていると突然地面が揺れた。
いきなり地震とかどうなってんの?
こんなご都合展開、僕は認めないぞ。
「ディス様危ない!」
ポチが飛び付いてきた。
ポチの悪意無きタックルで吹き飛んだ僕。
そのすぐ後ろに枝が殺到する。
今のは危なかった。
ポチタックルが無かったら僕は串刺しだ。
ポチは後でナデナデしてあげよう。
しかし、あのタイミングで地面が揺れるとかないわ。
これは何かカラクリがあるかな。
今度は見落とさないぞ。
「また揺れた。だが、この僕に同じ手は通じない」
決めセリフを言ったところで集中。
今度は地震の正体を見破った。
地震の原因はボスの木の根が振動してるせいだった。
ボスもネタがばれたら隠す気は無いらしい。
地面から無数の根が現れた。
根のくせに太すぎてご立派。
根はムチのように振り下ろされる。
木の枝よりもずっと速い。
防御は到底不可能だ。
回避はぎりぎり間に合ってる感じ。
「相手の攻撃が容赦ない」
あんなものを連発されたらどうしようもない。
こっちからも攻撃しなくちゃ。
「よし、覚悟完了。ポチ、あれ頼むわ」
「はい! ムーンバリアー!」
ポチが叫ぶと宙に無数の光る足場が出現。
これはポチの【月魔法】で使える防御魔法。
円形の壁を出現させて敵の攻撃を防ぐのが普通の使い方。
でも、僕はこれを足場として利用している。
これはレベル上げで学んだ戦法です。
僕は早速、足場に跳び乗る。
それから危ない空中散歩で、ボスに急接近。
枝も根も僕を追ってきますね。
立ち止まることなくどんどん行こう。
じゃなきゃ死ぬ。
「やってやる! やってやるぞ!」
ポチの出してくれた足場を使ってボスの真上までやってきた。
ここから華麗な反撃が始まる。
「おりゃーっ!」
落下の勢いを利用し、血の刃物をぶっ刺す。
これでどの程度ダメージを与えられるのかは不明。
個人的にはそれなりに効いてほしいけどな。
まあ、ステータスの差を見るに期待し過ぎは厳禁か。
「……あれ?」
なんだろうな。
豆腐に箸を突き立てたみたいな感触。
あっさりと血の刃物はボスの体を貫通です。
これには僕も困惑。
お前のステータスは飾りかよ。
どうなってんのと思っていると周囲の枝葉が一斉に揺れる。
これは木が悶えてるんですかね?
「あっこれヤバいな」
反射的に幹を蹴って、その場から離れる。
瀕死のボスは最後に大技を使ってきた。
自分が傷付くのも構わずの自爆攻撃だ。
枝や根をがむしゃらに振り回してる。
ボスは発狂したらしい。
「ひいいい! 死ぬ! 死んじゃうよおおおお!」
情けないこと言いながらちゃっかり全部回避する僕。
精細の欠けた攻撃など掠りもせぬわ。
それはポチも同じみたいで安心。
そんなこんなで僕とポチはボスが死ぬまで逃げ回っていたのだ。
《レベルが上がりました》
《レベルが上限に達しました》
ボスが死んだことで大量の経験値が手に入った。
そのおかげで僕のレベルはカンスト。
あれ、これってもう強くなれないパターン?
《進化が可能です》
おっと、よかった。
どうやら僕には進化の道があるっぽい。
ラノベの知識によると進化先は選べたりするのが定番。
だけど、この世界は違うみたい。
ただ進化するだけか。
まあ、強くなれるんだからいいかな。
「今から進化するからポチは見守ってて」
「え!? ディス様進化するんですか!?」
「そういうこと。じゃあ僕、レボリューションすっから!」
僕は進化したいと念じた。
すると意識が飛んだ。
あ、いけね。
こういう展開もラノベじゃよくあったね。
反省しておこうっと。
で、目覚めると僕は進化完了。
ポチ曰く、気絶してたのは数分間だけだったようだ。
外見の変化は無し。
背が伸びてるわけでもおっぱいがでかくなってるわけでもない。
ちょっとだけ残念。
でもステータスは変化あるでしょ。
というわけでステータスチェックだ。
名 前:ディス
種 族:シャドウヴァンパイア
レベル:1/40
状 態:通常
筋 力:157
体 力:142
俊 敏:204
魔 力:294
運命力:2809
スキル
【創造】【鑑定】【隠密】【気配感知】【血液操作】
【闇魔法】
称 号
【運命に翻弄される者】
なるほどステータスは結構変化がある。
種族はレッサーじゃなくてシャドウになってる。
これって変異種なのかな?
普通の進化とは違ってると思う。
実際のところは不明。
ステータスの数値は単純に上がってる。
これならもう雑魚には負けませんよ。
スキルは何故か【闇魔法】を覚えてた。
もしかして進化したことで覚えるスキルもあるんだろうか?
この辺は検証不足で何とも言えない。
まあ、スキルが増えて悪いことは無いな。
「……ん?」
ステータスの確認をしててふと気付いた。
僕達が立ってる場所って妙に魔力が多いような?
ちょっと気持ち悪くなるくらい魔力が濃い。
「ポチ。ここってこんなに魔力濃かったっけ?」
「……さあ? ここってそんなに魔力が濃いんですか?」
ポチって魔力を感じたりするの鈍いんだろうか?
それとも僕が感じやすい体質なの?
おっぱいは敏感だしありえない話じゃない。
「あ、もしかしたらあの木の溜め込んでいた魔力が放出されてるのかも」
お、なるほど。
ポチはなかなか賢いな。
この後、ナデナデしてあげよう。
「……あ! この魔力使えば【創造】で何か作れるじゃん!」
僕、冴えてるな。
誰かナデナデしてくれる人はいないかな?
「ふむ……さて何を作ろう」
何を作るか悩ましい。
欲しいものはたくさんあるからな。
「ディス様はこれからどうしますか?」
考えていたらポチが空気を読まない発言。
でも、そうだな……確かにそれも考えないと。
行き当たりばったりは良くないよね。
うーん……そうだな、こんな時は他人に丸投げ。
これ世界の常識。
「ポチはどうしたい?」
「そうですね……では、森の外へ出てみたいです」
「森の外か。町とかあるの?」
「あるらしいですよ。群れの連中が言ってました」
「ふーん、そう。なら行ってみるか」
なんか軽い感じで今後の方針が決まった。
僕達は森を出て町へ行くぞ。
でも町へ行くなら一つ問題ある。
僕達モンスターが町に入れるのかって話。
【鑑定】が使えるアイテムとかあったりすると困る。
それが検問で必須だったりして。
そうだとしたら面倒なことになるの確定じゃん。
モンスターだってバレたら討伐されちゃうかもしれない。
「……あ、そうならないためのスキルを作ろう」
【創造】で【鑑定】の効果を妨害するスキルを作ろう。
なんだよ、今日の僕はよく閃くじゃん。
というわけで魔力を操作してスキルを形作る。
「創造――スキル――」
《偽装を取得しました》
【偽装】は【鑑定】で表示される内容を偽る。
まあ、熟練度の差で偽れない時もあるかもしれないけど。
その辺はバレた時に考えよう。
「これでよし……じゃない」
問題発生。
ポチはどうするんだよって話。
これは盲点だったわ。
あースキルの譲渡とか出来れば解決するんだが……お、そうだ。
そういうスキルを作ればいい。
「創造――スキル――」
《コピー&ペーストを取得しました》
今度こそ、よし。
ちょうど周囲の魔力も使い切ったのも、よし。
それじゃ早速ポチにスキルをあげよう。
《偽装をポチに譲渡しました》
これでスキルの譲渡はできたはず。
念のためにポチのステータスを見たらちゃんと【偽装】があった。
「ポチの新しいスキルをプレゼントしたよ」
「え? 何言ってるんですか? そんなこと出来るわけ……あ、ほんとだ」
「これで町に行っても安心」
「……そうですね。この【偽装】があればバレませんよね」
なんだかポチの顔に釈然としないって書いてある気がする。
まあ、気にしたら負けだよポチ。
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