003
異世界に来てオオカミに僕の初めて……あげちゃった。
まあ、別にどうでもいい初めてだったけど。
お代はオオカミの命ってことで。
もうオオカミいないよね?
これ以上はキャパオーバーです。
「とりあえず出血を止めないと死ぬ……」
「クゥーン」
「ん?」
なんか弱々しい鳴き声がする。
まさか、オオカミの群れの残党かな?
それなら経験値になってください。
そんなわけで僕は周囲を探索。
木の陰に鳴き声の正体を見たり。
なんと傷だらけのオオカミの子供がへたり座ってた。
傷だらけな理由は知らない。
僕は神様じゃないんです。
知ってることの方が少ないんだよ。
……でも想像はできる。
このオオカミの子供って毛色が真っ白なんだ。
他のオオカミは灰色だからこいつは異端ってわけ。
異物は排除される運命。
簡単に言うと群れの仲間からいじめられてたんじゃない?
弱肉強食な世界で殺されてないだけ温情あるわ。
オオカミって優しいんだな。
「まあ、とりあえず【鑑定】で観察かな」
これでこいつの全てが丸裸に。
処遇はステータスを見てからだ。
名 前:
種 族:ムーン・ウルフ
レベル:4/30
状 態:衰弱
筋 力:56
体 力:48
俊 敏:85
魔 力:96
運命力:50
スキル
【気配感知】【月魔法】
称 号
【忌み子】
あらら、可哀想な子。
称号が酷すぎでしょ。
僕なら辛すぎて人生やり直してるわ。
それに衰弱してるのも気になるな。
放っておけば死ぬかもしれない。
ここで僕の経験値にしてもいいけど……善行してもいいじゃない。
よし、こいつは連れて行こう。
ペットって一度飼ってみたかったんだ。
親兄弟殺したかもしれない奴のペットになるのは運命だと思って諦めて。
というわけで僕はオオカミの子供を抱えて移動。
適当な場所でオオカミの子供を慎重に地面に置く。
で、ここで【創造】の出番ってわけだ。
今回生み出すのはスキルじゃなくてアイテム。
【創造】はなんでも生み出せる可能性があるスキルなのだ。
「創造――アイテム――」
魔力を集め、ゲームにあるような傷薬をイメージする。
塗り薬じゃなくて飲み薬の方で頼む。
《傷薬を取得しました》
液体入りビンが出た。
傷薬なんて簡単に作れちゃうんだね。
とりあえず最初は自分に傷薬を使ってみた。
この世界の傷薬がどのくらいの効果あるのか知りたいし。
そんなわけで飲んでみた。
味はしないし香りも無い。
無味無臭な薬を飲んだ結果……傷が塞がったぞ!
こいつはすげーや!
これならオオカミの子供も大丈夫でしょって感じ。
オオカミの子供の口にビンを突っ込んで薬を飲ませる。
すると傷が治ってたちまち元気に。
「ワフ!」
元気になったオオカミの子供は立ち上がって吠えた。
僕に対して敵意なんか無さそう。
ワンワンと鳴きながら元気に僕の周りを駆け回ってる。
これならペットにしても問題無いっぽい。
それじゃペットに名前を付けてあげよう。
イカした名前付けてあげるからな。
「よし、お前は今日からポチだ。これからよろしくな」
「ワフ!」
やっぱりシンプルな名前が一番だよね。
ってことでオオカミの子供の名前はポチに決定。
ポチも喜んでるし問題無し。
《ムーン・ウルフは真名を取得。ランダムにスキルを取得します》
ポチはスキルを手に入れたらしい。
名前を付けただけでスキルがもらえるのか。
ふーん、ラッキーじゃん。
「ちなみにポチはどんなスキルを手に入れたのかな――うわっ眩し!」
ポチの方見たらポチが光ってた。
結構って言うかかなり眩しい。
どれくらい眩しいかって言うと真夏の太陽を直視してるくらい。
夜の住人であるヴァンパイアにこの光はいやーきつい。
そんでもって光が収まるとそこにいたのは全裸で白髪の女の子。
おっぱいを見るにまだまだお子様ですよ。
ケモ耳とケモ尻尾がとってもキュート。
「あ、主様。名前をくれてありがとうございましゅ」
あ、噛んだ。
なんだよ……可愛いじゃん。
というかこれってラノベで見たことあるぞ。
男の欲望が生み出した定番中の定番……美少女化だ!
異世界にもちゃんとあるもんだな。
流石ファンタジー。
僕、感動しちゃった。
「……あれ? でもこれってご都合展開すぎない?」
急に冷静になる僕。
だって細かい事が気になる性質なもんで。
ここは夢と希望の詰まったゲームの中じゃない。
割と理不尽さを感じちゃう現実なんですよ。
なんか超常の力が働いてるのかな?
まあ、僕のセカンドライフがそれで潤うならノー問題だけど。
ちょっぴり気になっちゃう。
「えっと、どうしたんですか?」
「な、なんでもないよ」
おっとっと思考の檻に囚われるところでした。
今は目の前のポチに集中しよう。
「えと、主様の名前はなんて言うんですか?」
「え? 僕の名前?」
ポチの発言で気付く真実。
そういえば僕って名無しじゃん。
ステータスにも名前の記載はありませんよ。
こいつは参った。
僕はその辺にいる名無しのモブモンスターと同類だったなんて。
「名前は……」
「名前は?」
僕の名前ってなんだっけ?
前世の名前を覚えてないから分かんない。
天を見上げるがそこに名前が彫ってあるわけでもなし。
うーん、とりあえず仮名で通す。
真名は隠しておくものだよ……フフフ。
「僕の名前はディスです」
「なるほどディス様ですか。これからはディス様とお呼びしてもいいですか?」
「え、ああ、うん、いいよ」
僕の渾身の命名サラッと流すのやめて?
女の子だからハートが繊細なの。
「ディス様はこれからどうするんですか?」
「うーん、まあしばらくはレベル上げかな」
「分かりました! 微力ながら私もお手伝いします!」
「……まあ、ほどほどにね」
ポチのキラキラした目が眩しい。
これは有言実行せねばなるまい。
これからしばらくはレベルアップに邁進するのだ。
そんなわけで僕達はレベル上げと称した虐殺をすることに。
いやぁ、この森はモンスターの宝庫ですね。
石を投げたらモンスターに当たるくらい大量にいる。
現れるのは、植物のモンスター。
時々、シカやイノシシなどの動物系が出てくる。
オオカミが出てくるのはほんと稀。
まあ、今の僕にとってはどいつもこいつもただの経験値なんですがね?
ごめんね、強すぎちゃってさ。
これも僕に経験値を献上したオオカミの群れが悪いんだ。
レベルアップした僕に敵無し。
「ディス様は強いですね!」
「ふふん。ポチもそう思う? 僕もそう思う」
このまま無双展開が続くと僕は思ってました。
でも世の中はそんなに甘くない。
「あれ? なんか霧が濃くなってる気が……?」
経験値稼ぎと休憩を交互に繰り返していたら周囲に変化が。
薄暗い森が更に暗くなっていくではないか。
原因は、そう霧のせい。
ラノベじゃこういう時ってボス戦がある前兆。
準備無しに勝てる気がしないので引き返したいな。
「ディス様。何か近付いてきます」
うん、分かるよポチ。
僕も【気配感知】持ってるし。
でかい奴がこっちに向かって来てます。
「ん? なんだか周囲の木が避けてるような気が……?」
いや、実際避けてるよねこれ。
よく見たら木がズズズって横滑りしてますよ。
怪現象を目撃した僕の正気度がすり減っていく。
「うわぁ……すごく大きな木」
ポチの感想は当たってる。
近付いてきた相手の正体は巨大な木だった。
漂う空気が神聖な感じで気持ち悪い。
木の幹に人の顔があるしこれも気持ち悪い。
「とにかく【鑑定】しよう。うん、そうしよう」
さあ、僕の眼よ!
敵を白日の下に曝せ!
名 前:
種 族:エルダー・トレント
レベル:43/60
状 態:通常
筋 力:674
体 力:871
俊 敏:38
魔 力:650
運命力:47
スキル
【樹木操作】
称 号
無し
おぅふ、流石ボス。
なかなかジャブの効いたステータスしてるじゃないの。
雰囲気からして強いのは分かってたけどさ。
実際に数字で見せ付けられるときつい。
これオオカミよりも強いじゃん。
「逃げるか」
僕はボスから逃げようとした。
しかし、いつの間にか背後には壁が。
木が絡み合って即席の壁になってる。
僕達に逃げ場無し。
「強制戦闘はやめろおおお!」
森に僕の叫び声が響き渡った。
それからボス戦が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます