12/24 Sun

 イブだというのに寺にいる。毎年のことだが、なにかがおかしい、と思ってしまう。テンションの上がった颯真に引きっられて、まぁいいか、とどうでもよくなるんだろうけど。

 フライドチキンとピザを食べて、ゲームをして、罰ゲームに猿の鳴き真似をしてつまらねぇとダメ出しを食らった。


「めっちゃリアルとか、もっと恥ずかしがるとかないのかよ」

「ソノヨウナゴ要望ハ受ケ付ケマセン」

「うっわ、妙にウマッ!」

「最新のアンドロイドって言ってもいけそうだ。表情筋がないのもよしあしだね」

「僕デ遊バナイデクダサイ……やめてい? あと、表情筋がないことはない」

「電源切れたな」

「電池変えたらいけるんじゃね?」

「ピザでも食べれば再起動するよ」


 新太の言葉を信じた颯真がピザを片手に迫ってきた。穂高を生け贄に差し出したら、やめんかと頭を押さえつけられる。無言で押し合っていたら、予想外な所から言葉が落ちてきた。


「来年もこうやってバカ騒ぎできんのかなぁ」


 颯真の言葉に、三人で目配せをする。


「急にしんみり来たな」

「これ、ただのジュースなのに」

「……」


 一人の世界に入ってしまった颯真は捨てられた犬のような有り様だ。じめじめしながら、ぽつぽつと話し出す。


「だってさ、メグのこともあったじゃん。ホダカとか、アラタにもそういう相手ができたら、俺、ボッチじゃん」

「そん時は自分も彼女作れよ」


 穂高がツッコミをいれても、でもなー、俺なんてなーとうじうじが続く。

 颯真のコップを嗅いでみたが、変な感じはせん。ジュースだ。ジュースで酔えるのか。


「恵は顔がそこそこいいだろー。穂高は運動できるだろー。新太は頭いいだろー。俺はボンクラだしなー。さみしなぁ、さみしいよ」


 誰もそんなこと一言も言ってないのに、颯真は手をいじいじする。

 どこ行った。アホみたいなうざったい元気は。イブだから、落ち込むのか。

 穂高は額を抑えはじめて、新太は新太でクリスマスブルーかと興味深そうに言っとる。

 どーでもいい空気が、どーでもよくなくなってきた。


「まぁ、付き合うにしても高校卒業してからなんだろ? 来年は問題ないって」


 穂高が励ましても、颯真は元気を取り戻さなかった。バカでうるさくて、アホなことばかりしているくせに、たまに大事な爆弾を落としていく。まさに、この時もそれで――


「夏海さんはさ、付き合いたいって思っとらんのんかな」


 盲点だった。



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