12/22 Fri

「じゃあ、またクリスマスに」


 終業式後、あわよくば一緒に帰ろうと思っていた考えは撃沈した。夏海は友人と用事があるらしい。

 手を振って別れて背中が小さくなるまで見送る。


「メグ、おった! イブは予定ないんじゃろ。皆でクリスマスパーティーしようぜ」

「冬休み、早く終わらないかな」

「始まったばっかだけど?!」

「騒ぐなよ、阿呆」


 叫ぶ颯真の頭を穂高がはたいた。


「颯真の家に十一時集合ね」


 耳にイヤホンを差し込みながら新太が言った。去年もやった食べて騒ぐだけの集まりだ。予定もないし、わかったと頷いた。

 なぜか一緒に帰るはめになって、颯真が横に並ぶ。


「プレゼント、決まったん?」

「まだ」

「なんか手伝おうか?」

さやと探すからいい」


 だって、と颯真が穂高と新太を振り替える。どうやら心配していたようだ。さやのことを信用していないわけではないが、他の意見を聞いてみよう。


「花瓶ってどう」

「アリだろ」

「……いるか?」

「いらないと思うよ。どんなのを買うかは知らないけど、出かけた先だと重いでしょ」


 新太の冷静な意見に、確かにと思わされる。でも、あれ?


「なんで、出かけるって知っとん」

「すまん。俺が言った。パーティーばか騒ぎに誘うかどうかって話になって、つい」

「え」


 俺が足を止めると皆が足を止めた。


「どしたん」

「なん」


 颯真の眉がはねあがり、穂高はひそめ、新太はコリをほぐすように上下した。


「いつも通り行く気だった」

「だよなー! 楽しいもんなぁ!」

「気ぃ使っただけだろ」


 颯真に背を叩かれ、穂高には嘆息をつかれた。新太は肩をすくめている。

 空は雲ひとつない。なんも解決していないのに、なんとかなる気がした。



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