12/20 Wed

 夏海に聞けないとなると、聞ける相手は限られてくる。

 さやのは参考にならん。颯真や穂高、新は期待できん。親に聞くのも面倒くさそうだ。

 再び、バイトで駆り出されたことをいいことに、颯真のじいちゃんに聞くことにした。休憩を見はからって話題を切り出す。


「女の子にあげるプレゼントって何がいいと思いますか」

「なんじゃ、藪から棒に。彼女か」

「彼女ではありません」

「青春じゃのう」

「ニヤつくなよ、気持ちわりぃ」


 失言した颯真ばかは拳骨をもろに食らった。

 何事もなかったかのように、腕を組みなおしたじいちゃんは教えを説くように言う。


「下手なもんやるより、花をあげた方が喜ばれるぞ」

「相手が花屋の娘の場合、どうすれば」

「……お手上げじゃな」


 颯真のじいちゃんらしかった。

 作業を再開するか、と座り直した矢先、修行をしたくない颯真が訊ねる。


「じいちゃん、ばあちゃんに何あげたん」

「聞きたいんか」


 じいちゃんの目が厳かに光った。いやな予感しかしない。


「言いたくないんなら、別にええよ」


 面倒たいぎそうに言った颯真に片眉を上げたじいちゃんはわざとらしく喉の調子を調えた。


「まぁ、後生のために聞け。着物をあげたら、こんな上等なもの何処に着ていくのかと言われ、小物をやればこんな子供っぽいもの恥ずかしくてつけれんと投げられた。それから――」


 念仏のような思い出話は延々と続いた。

 頼る相手を間違えたみたいだ。

 半分、目を閉じかけていると、しかし、と妙に力を込めて、ためる。


「花瓶だけは気に入ったようでな。いつも玄関に飾っとる」


 得意気に言ったじいちゃんの取って置きのようだ。

 花瓶か。いいかもしれん。どんなものがいいかとぐるぐると考えとったら寝ぼけた声が飛んでくる。


「あのキラキラしたやつ?」

「津軽びいどろじゃ。センスがいいじゃろう」

「今までの話を聞いたら、ちっとも――いてぇ! これ以上、馬鹿になったらどうすんだよッ」

「馬鹿も阿呆も変わらんわ」


 また飽きずに、やいやいやいやいやり始めた。

 いいや、放っとこ。無心になるために筆を取った。



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