12/19 Tue

 二十四日の日曜日は夏海が忙しいということで、二十五日に出かけることになった。ほくほくという気持ちを抱えて一晩たち、はたりと気付く。


「まずい」

「何が」

「プレゼント、決まっとらん」

「知らん」


 最近、穂高が冷たい気がするのは気のせいではない。なんやかんやと言いながら口出しなり手助けしてくれるヤツなのに、今回ばかりは俺は助けられんと明言されとる。

 はぁ、と盛大なため息が落ちた。俺じゃなく、隣から。


「夏海さんの友達とかに聞いたらいいんじゃねぇの」


 はっとなる俺の気持ちを読める穂高は、コミュりょくマイナスめ、と呆れられる。


「穂高」

「なんだよ」

「夏海の友達ってどれ」

「土下座して謝れ」


 興味がなかったから、とは口がさけても言える状況じゃない。それぐらいわかる。

 クラスを見渡してみたが、わからん。わからんものはどうしようもできない。

 穂高に顔を向けたら、盛大なため息のおかわりだ。

 穂高が顎をしゃくる先には、夏海がおった。その隣で話す女子は何となく見覚えがある気がする。

 楽しげに話す二人を見て、俺は気付いた。

 夏海本人に聞けばいいのでは? サプライズであげるわけでもないし。善は急げと教室の端から夏海の席に向かう。


「夏海、ほしいもんある?」


 クラス中の注目が集まった――ような気がして、振り返ったらいつもの風景だった。穂高の目が生ぬるいだけで、どうってことはない。

 夏海に向き直ると、びっくりしとる。


「ほしいもの……て、クリスマスプレゼント?」


 そ、と答えると、夏海の頬が赤くなった。しばし悩む素振りを見せて、眉を八の字にして笑う。


「音無くんの時間をもらうから十分だよ」

「いいじゃん。アクセサリーのひとつでももらったら?」


 たぶん友人が割り込んできた。いい仕事をしてくれる。

 これで解決だと期待したのに、夏海の反応はイマイチだ。


「やっちゃん! わたし、アクセサリーとかもらってもつけんよ」

「デートでつけ――んぐ」

「音無くん、大丈夫だから! 大丈夫だからね!!」


 友人の口までふさいで、夏海は断言した。

 そんなことを言いながら、きっと喜んでくれるはずだ。たぶん、きっと。何あげるか決まってないけど。



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