12/16 Sat
土曜日の昼下がり、男四人で円を組むはめになった。
穂高の言い分をまとめると、と新太は前置きをして、すらすらと言葉を並べていく。
「去年の文化祭で一目惚れをしたけど情けないことに名前は愚か顔もわからず、やっと見つけたのは今年の五月。しかもクラスメイトだったという残念なオチ。気になって気になって、我慢しきれそうになくなって穂高に接触禁止令を出されたと――間違いないね」
「間違いないな」
「ふはっ、残念すぎる」
「……」
「初めて声をかけたのは七月頭、デートに言ったのは七月半ば、彼女の弟が生まれて忙しくしていたら、八月九月と過ぎて、文化祭で急接近というわけもなく、十月十一月と現状維持、インフルエンザになって、今に至る、と」
「事実だな」
「なぁなぁ、なんでデートには行けてんの」
颯真の発言は全員に流された。
涼しい顔の新太は議長のように話をまとめる。
「目下の悩みは、付き合うかどうかというより、お付き合いとは何かという段階だね」
「残念すぎる」
「残念すぎるな」
「……」
「穂高、普段の様子を証言してくれ」
「目で追うのはいつも。かわいいと言うのは序の口、夏海さんが笑うと真顔で喜ぶ、無意識に頭を撫でる。補足するなら、クラスメイトの目が生ぬるい」
「由々しき事態だね」
「キモいな」
颯真の背中をどついてやった。いってぇ、という声は全員に黙殺される。
「いっそ、付き合ったら?」
新太が軽い調子で話を終わらせにかかってきた。
颯真に眠そうなパンダの顔してると言われたのは無視する。うすーく目を開いて、どうでも良さそうな人のいい顔、これ以上面倒なことを言うなという顔、きらきらと期待に満ちた顔を見渡す。コイツらの意見も聞きたいので、ちょっと尋ねることにした。
「付き合ったら、何でもしていい?」
一番にツッコんで来たのは穂高だ。
「あほか!!」
「相手の同意があればいいんじゃない」
「えっ、いいの?!」
新太の言葉に、まんまと颯真がひっかかって、おーまーえーらーなーと穂高が唸る。
それなりに真剣には考えてくれとるみたいだし、昨日から考えとった本音を言っておくか。
「たぶん、付き合ったら、歯止めきかないと思う。よぉわからんけど」
「あれで歯止めきかせてるつもりなのか」
「穂高達のクラスじゃなくてよかった」
「逆にオレは同じクラスで見てみたいけど?!」
小うるさいのは聞かんかったことにして、意見を通す。
「大切にしたいし、笑顔にしたいってのはあるけど、それって付き合わんでも出来る」
「だから自分が付き合うつもりはないけど、夏海さんに彼氏ができるのは困る、と」
新太の言葉に頷きかけて、首をひねる。
「まぁ、卒業する時には、付き合いたいかなぁ」
妙な間が空く。無感情な目と生ぬるい目、それから真ん丸な目。
「メグの謎の自信、ムカつくよな」
颯真の発言に珍しく二人が頷いた。
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