12/14 Thu

 今日も颯真の家に手伝いに行こうとした放課後、夏海と目が合った。

 あわてふためく姿がかわいい。


「どったの」

「え、あ、うん……最近、忙しそうだな、て思って」


 目が合わないのは、どうしてだろうと覗きこんだら、真っ赤になった。薔薇や牡丹もびっくりだ。見られているとわかってか、目は泳いどる。

 これ以上、からかうのもかわいそうだと顔の位置と話を戻す。


「友達の家の仕事、手伝っとる」

「そっか。じゃあ、えっと、頑張って?」

「百倍がんばる」


 それは頑張りすぎじゃないかなぁと笑顔で夏海と別れた。幸せにひたっている俺に水をさすヤツが現れる。


「お前らって、付き合わんの」


 さらりと聞いてきたのは穂高ほだかだ。颯真と同じく、小学校からの付き合いで文句を言いながら世話を焼いてくれる。説教も多いけど。


「つきあう」


 おうむ返しに言ってみたが、全く想像がつかん。

 俺の表情はわかりにくいとよく言われるけど、さすがというべきか、くされ縁穂高は俺の考えを読み取ったらしい。マジかよとこぼしたかと思えば、じろりと睨み付けられ、げんなりとした声で言われる。


「夏海さんが誰かと付き合うようになったらさ。お前、相手してもらえんの」


 頭に雷が落ちた。いや、隕石が落ちたかもしれない。

 そうか。相手をしてもらえんのは困る。めちゃくちゃ困る。


「こまる」

「知らん」


 穂高は俺を突き放して部活に行ってしまった。

 写経バイトがはかどらなかったことは言うまでもない。



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