12/11 Mon
やっと、月曜日だ。いくら学校が
水やり当番である夏海に会えるし、運が良ければ朝から独り占めができる。土日に何をしてたとか、ゲームのイベントが楽しみだとか、弟が寝がりを打ちそうだとかそんな話をして、周りに人が増えてきたら自然と別れるような時間が何よりも大切だった。
俺よりも早起きな夏海は、一番遠くの北校舎から水やりを始める。陽が上るのが遅くなっても変えなかった習慣なのに、今日は校門のある南校舎側の水やりをしとった。寒くなって花も少なくなったし、もう他は終わったのかもしれん。
時間を逃すものかと足が早くなった。
声をかけようとする前に、挨拶をしてきた夏海が続ける。
「音無くん、元気になったんだね」
本物の笑顔の前で数秒、固まってしまった。一週間のおあずけが相当こたえていたようだ。おかげさまで、と軽くお辞儀をした。
水を止めた夏海が俺に近づいてくる。
「ゲームもログインしてないから心配したんだよ」
「ぐ」
「あ、そうだ、この前、写真送った花束あるでしょ。せっかくだし、プリザーブドフラワーにしたんだ。受け取ってくれる?」
紙袋の中身を見せながら差し出されたものは、欲しくて欲しくてたまらなかった花束だ。名前はわからんけど、黄色とオレンジの元気の出る色でいっぱいだ。
花束から目を話せないでいると夏海が早口で続ける。
「休んでた時のノート、コピーしたのも入れたけぇ、よかったら使って?」
ちょっと待ってほしい。怖いほどに胸が苦しい。息も苦しい。かわいくて苦しいなんて、初めて知った。
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