第325話 カミラ・アステル・ブラックの怒り
あたしは、バカ弟の姉として、上に立つために訓練を続けていたわ。フェリシアやラナなんかが、あたしの邪魔をしてきたりもしたけれど。まあ、良いわ。あたしは寛大だから、バカ弟のワガママも許してやるのよ。
当然よね。あたしは最高の姉なんだから。その優しさを、しっかりと受け取ることね。バカ弟だって、泣いて喜ぶんじゃないかしら。
そんなこんなで、他の家に出かけていたバカ弟も、ようやく帰ってきたわ。つまり、バカ弟に姉の何たるかを刻み込む機会。そう思ったのよ。あたしの努力の成果を、叩きつけてやるとね。
ただ、妙な邪魔者が入ることになったわ。許しがたいことにね。
「バカ弟が、どこぞの誰かに狙われてる。ほんと、バカにしてくれたものね」
懸賞金までかけられて、念入りなことだわ。うざったいったら、ありゃしない。せっかく、バカ弟の心にも体にも、あたしを刻み込む機会だったのに。
また、あたしの時間を奪おうとする。とてもじゃないけど、許せなかったわ。剣を握りつぶしちゃうんじゃないかと思ったくらいよ。
バカ弟を傷つけて良いのは、あたしだけ。それを理解しない愚か者は、何度でも湧いてくる。
ただ、都合の良いことも、ほんの少しだけはあったわ。バカ弟にとっても敵だから、遠慮なくあたしの怒りを叩きつけられるんだもの。そんなことで、許したりしないんだけどね。
「あたしが打ち破るべき存在を、よくも軽んじてくれたわ」
ただのザコが徒党を組んだところで、無駄なのよ。ただ戦場の数だけを誇るような存在なんて、あたしにすら劣る。その程度の実力で、バカ弟を狙う。どれほどの罪だというのかしらね。
あたしが全身全霊をかけても、まだ届かない。そんな存在を、たかが貴族や傭兵程度が殺せると思う。もう、生きていてもしょうがない愚か者よ。
その程度の奴らが、あたしのレックスをわずらわせようとする。いい加減にしてほしいものよ。無知は罪というけれど、ほんとに大罪よね。バカバカしい。
あたしとバカ弟が競い合う時間は、くだらないガラクタが割って入って良いものじゃないのよ。
「そうよ。あたし達の戦いを、誰にも邪魔させたりしない」
仕方ないから、バカ弟を手伝ってあげるわ。くだらない手間を取らせるのは、時間の無駄だもの。ただのザコをいくら殺したって、あたしもバカ弟も成長なんてできないわ。
だから、とっとと片付けるべきなのよ。どんな手を使ったとしてもね。
「いいわ。あたしの邪魔をするのなら、皆殺しにするだけよ」
殺そうとするのだもの。殺される覚悟くらい、できているでしょう? 仮に覚悟がなかったとして、関係ないけれど。
もう、結末は決めているのよ。命乞いをしたくらいで、手加減すると思われちゃ困るわ。どれだけの財宝を持ってこようと、どうでもいいわ。
あたしが慈悲をくれてやるだけの価値なんて、無い。そんなの、考えるまでもないことなんだから。
「誰が相手だろうと、どんな事情を抱えていようと、関係ないわ」
赤子だろうが何だろうが、殺すだけ。人質を取られていようが、病気の家族を抱えていようが、知ったことではないわ。恨むのなら、自分の愚かさを恨むことね。
せいぜい、一族丸ごと根切りにしてあげるわ。それでようやく、ほんの少しくらいは気が晴れるのよ。
あたし達の戦いは、他のくだらない存在が邪魔して良いものじゃないのよ。それを、しっかりと知らしめないとね。
「バカ弟を倒して良いのは、あたしだけなんだから」
それが、姉の特権ってものよ。苦しむ顔も、泣く顔も、あたしだけが見て良いものなのよ。だから、バカ弟を傷つけようとするやつなんて、いらないわ。
あたしの権利を奪おうとして、無事で済むはずがないでしょう? そんなの、当然の真理よ。分からないのなら、来世でやり直すべきよね。
なんて、あたしも優しいわよね。ただ殺すだけで、止めてあげようってんだから。死んでしまえば、苦しまなくて済むのよ。感謝してほしいくらいよね。魂ごと消し飛ばしたって良いんだから、ね。
「あたし達の戦いを汚すものに、容赦なんて必要ないのよ」
とはいえ、たかがゴミ掃除くらいに時間を取られるのもね。あたし達の戦いのために、余計なことはするべきでないわ。
さっさと皆殺しにして、それで終わり。後の時間は、バカ弟との戦いに使う。それが、効率ってものよね。
「バカ弟が強くなる時間も奪われる。あたしとバカ弟が競うための時間も」
ほんと、わきまえてほしいものよ。どうせ、くだらない妬みでしょ。その程度のことに、あたしやバカ弟の時間が奪われる。最悪よね。
バカ弟が脅威だというのなら、弱いのが悪いのよ。愚かなのが悪いのよ。自分を恨むべきことで、八つ当たりする。最低だわ。
「そんなの、許して良いはずがないもの。関係者は、死んで償うべきよね」
気持ちだけなら、もっと痛めつけたいけれど。というか、拷問でも何でもしたいくらいだけど。ただ、どうせバカ弟も関わってくるもの。あんまり、あたしの怖い顔を知られてもね。
甘ちゃんなバカ弟なんだから、あたしが怒っている姿を見せたら、怯えちゃうかもしれないもの。そんなの、必要のない感情よね。
「あたしの道は、誰にも阻ませはしない。それを、思い知ってもらわないと」
ちゃんと、伝わるようにね。できるだけ残酷に、死なせてあげましょう。その情報が、多くに伝わるようにね。あたし達に敵対することが、どれだけ愚かなのかを思い知らせるためにね。
ほんと、面倒なものだわ。バカ弟と戦うのに、いちいち余計なことなんて考えなくてもいいのに。
「それに、バカ弟はあたしのものよ。有象無象が触れていい存在じゃないのよ」
ただのゴミが、いきがってくれたものよ。バカ弟の価値も、あたしの価値も分かっていない。あたし達に余計な手間を取らせた罪は、しっかりと償ってもらわないとね。
何の力も持っていないガラクタにはね、仰ぎ見ることすら許されない。そんな存在なのよ。
「あたしだけ、あたしだけが、バカ弟をギッタンギッタンにできるんだから」
痛めつけて、泣かせて、その後で抱きしめてあげる。そんな役割は、あたしだけのもの。奪おうとした時点で、許されないのよ。
あたしのレックスなのよ。可愛い愚かな弟。そうよね。
「誰かは知らないけど、覚悟しておくことね。楽に死ねると、思わないでもらうわよ」
少なくとも、無惨な姿を残すことになるでしょうね。そうじゃなきゃ、あたしの怒りは思い知らせられないもの。とはいえ、さっさと殺すんだけどね。
つまらない存在のために、あまり時間をかけるべきではないわ。そんなことより、バカ弟を優先すべきなのよ。
「まったく。つまらないことに時間を取られるものね。ほんと、くだらないわ」
だから、少しでも早く皆殺しにしてやらなくちゃね。あたしとバカ弟の神聖な儀式は、誰にも邪魔させないわ。そうよね。
あたしはもっともっと強くなる。そして、絶対に泣かせてやるんだから。
「待っていなさいよ、バカ弟。さっさと終わらせて、あたし達の戦いを始めるの」
あたしの全てをぶつけるわ。せいぜい、受け止めてみなさい。いくらバカ弟だからって、あたしを軽く見たら痛い目を見るわよ。
「その後で、あんたのすべてを奪ってあげるわ。嬉しいわよね。あんた、お姉ちゃんが大好きだものね」
何度でも抱きしめてあげる。甘やかしてあげる。そして、また痛めつけてあげるわ。
ねえ、楽しみにしていなさいよ、レックス?
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