第4話 : はじめましてと武器選択
◇
「こんにちは!パーティーの結成はこちらでお手伝いしてます!
この用紙に名前と、パーティーで達成したい目標をお書きください!」
数分街の中を歩いていると、それらしき店を見つけた。
『パーティー結成お手伝いします』と書かれた看板が店の外に立てかけられ、
横に受付らしき人が座っている。
近づいてみると、名前と目標を記入できる用紙と、ペンが置いてある。
どうやら全体公開版マッチングアプリのようなもので、書いた目標が同じだったり、似通っていたりした者同士を集めてパーティーを結成するという事らしい。
試しに名前を書こうとしたが、埋まっている欄は全員アリアだのローグだの、片仮名しか書かれていない。
この中に
次に目標を書く。
まあ『パーティー結成お手伝いします』が漢字だったので杞憂だとは思うが、一応通じなかった場合を考慮して、片仮名でルインドヲタオスと書いておいた。
「お書きになりましたら、あちらの席でお待ちください。」
そう言われ、店の奥に案内される。
店の奥にはとても大きなソファと、そこに座っている数人の客がいた。
受付に言われるがまま、俺もソファに座らせられる。
「それでは、相手が来るまでここでお待ちください。」
受付はそう言って、また店の外に戻っていった。
――あれからどのくらい経っただろうか。
俺が来た時にいた数人の客は、受付に呼ばれてあれよあれよとパーティーを結成。
気づけば店の奥には俺しかいなくなっていた。
咳をしてもひとり。
生前、マッチングアプリは一度も使ったことがなかったが、
多分使ってたら物凄い自己否定に苛まれていただろう。
あと5分、いや10分誰も来なかったら店を出よう。
「シーケさん、お呼び出しです。」
「はァい!!!!!!」
来た。
多分嬉しさがそのまま声量に出たがそんなことは気にしてられない。
ソファに置いていた麻袋を持ち、すぐ店の外に出る。
正直誰でもいいが、出来れば優しくて俺に尽くしてくれて且つ死なない奴で――。
「うわなんかアホっぽ!!!」
「はァ!?!?!?」
そこに立っていたのは、ピンク髪で高身長のちょっとギャルっぽい女性。
肩に大きめで黒色の鞄を掛けている。
直感と最初の言動からの憶測でしかないが、多分俺の理想と真反対の人物を引いた。
「パーティー、お二方で結成してしまってもよろしいですか?」
この女性と!?絶対にイヤだね!と心の中ではそう思っていたが、
実際この女性との結成を拒否したとして、次いつ来るかは全く分からない。
またこの店で待ち続けるのはごめんだ、そう思いしぶしぶ承諾した。
◇
「私レリナ!
ちょっとお前じゃ心許ないかもなぁー!」
「俺、えーとシーケ!
俺も
幼稚、本当に幼稚。俺も幼稚だしあっちも幼稚。
店から出て街の中心部まで戻る道中、
この異世界に汚点があるとしたらこれになるだろうという位の、
凄まじく幼稚な煽り合い合戦が、始まっていた。
「冷やかしじゃねぇよ!私だってホンキで
ただ呼び出し貰って店の外出たお前がすげーアホっぽかったからさぁ!」
「そんなにアホだった自覚ねえしお前よか断然頭いい自信あるね!
なんせ俺スキル貰ってすーぐ使いこなせたしィ!」
「スキルって生まれたと同時に貰えるっぽいし別にすぐ使いこなせたとかなくねぇ?
すぐって何、産声上げた瞬間スキル使いこなし始めたのぉ!?」
「え?」
不味ったかもしれない。
よく考えれば俺は転生時にスキルを貰ったが、恐らく転生なんて概念がない純性の異世界人は、その限りではないだろう。
取り繕わねば。
「も、物心ついた後すぐって意味だけどォ!?
そんなのも分からないなんてやっぱり俺の方が頭いいのかなァ!」
「大体お前のスキルは何だよ!パーティーになったんだから共有くらいしろよ!」
「そういうお前が先にしろォ!!!」
そうしてぎゃあぎゃあ言っている間に、街の中央部に戻ってきた。
「お、戻ってきた。ちょっと待って、店で色々買ってくるから。」
「俺も店行きたいんだけど。」
「別にいいけど、お前お金あるの?」
「あぁ、あるある。ポッケにざーっと金貨がな。」
そう言いポッケから麻袋を出し、開けて金貨を取り出す。
金色でないので金貨、と言っていいかは分からないが、それは青銅色、少し錆びていて、中央に竜の姿のような模様が浮き出ている。
全部合わせて12枚、異世界の相場が分からないが、剣の1つくらいは買えるだろう。
「俺金貨12枚持ってるけど、これで買える物ってどんな感じ?」
「まあ12枚全て使い切るんなら、剣と盾とかが買えるかな。」
思ったよりいい物が買えそうだ。
そのままレリナについていき、店の中に入った。
◇
店の中はかなり閑散としていて、よくある雑貨屋のような風貌をしていた。
中にはカウンターに座っている年老いた店主が1人、あとは誰もいない。
至る所に様々な武器が固定されており、そのどれもが精巧で目を奪われる。
「このダガーナイフ良いなー。俺これにするわ。」
「私は
「武器チョイスやばくねお前。あるのもすごいけど。
というか第一お前十手とトンファー使えんの?」
「使える。」
「へー、すげえな。俺はそんなの使えねーからダガーナイフにするわ。」
こうして俺はダガーナイフ、レリナは十手とトンファーとバックラーを買った。
俺はともかく、レリナはそんな癖しかないような武器で平気なのだろうか。
少し不安になる。
◇
店主に礼を言って店を出る。
俺の買ったダガーナイフのお代は金貨4枚だった。
そのままあてもなく街を歩く。
レリナがバッグから取付型のホルスターを2つ出し、左右の腰に据え、その中にトンファーを収める。
十手とバックラーは鞄の中に放り込んだ。
俺はバッグも何もなかったため、服のポケットにダガーナイフを突っ込む。
ダガーナイフはポケットを多少貫通し、刃先が少し飛び出した。
「これからどこ行こうかな。」
「なんか今買った武器とかスキルとか練習出来る場所ねえの?
スキルのお披露目もそこでしようぜ!」
「練習ねぇ…。あ、私ピッタリの場所知ってるから連れてってやるよ!」
そうして連れてこられたのは、外装に大きく『訓練場』と書いてある店。
「やるぞー!」
レリナはそう言って、店の中に入っていってしまった。
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