第2話 : 錯乱、質疑、あとスキル




「まあ悪かった。急に転生させたのは謝る、許してくれ。

 私の名前はリタ、リタ=エリージョ。異世界の案内役だ。君の名前を聞こう。」


品田雄介しなだゆうすけ。あさっき自己紹介強要してごめん。

 てかその前にここどこだよ、デスゲーム会場?」


「ここは選ばれし者のみが辿り着ける死後の世界だ。

 辿り着いた者は『スキル』を持ってもらい、

 ある程度文明の発展した異世界に行ってもらう決まりになっている。」


「つまり俺もっかい死ぬって事?」


「いや違――」



何も考えず脊髄からそのまま放り投げられたような語彙で会話を繋げながら、俺は未だ処理し切れていない情報を処理していた。


まずここはどこか。

少女の言う事を鵜吞みにするなら、ここは死後の世界という事になる。

確実に後遺症が残りそうな致命傷がきれいさっぱり消えているため、恐らく本当だろう。


次にここから帰れるかどうか。

これも少女の言う事を鵜吞みにするなら、これから異世界へ行く事になる。

正直元の世界に帰りたいが、どっちみち帰れたところで多分またヘマして死んでしまう気がするので、一旦少女の話を聞いてから考えることにする。


最後にこれからどうなるのか。

これは憶測だが、『スキル』や『転生』という言葉が聞こえてきたので、

恐らく『異世界転生』をしてしまい、これからは異世界で何かしていく、そんな具合だろう。


俺はまだ死んでいなくて、これが何らかのテレビ番組である可能性も考えはしたが、

トラックに撥ねられ瀕死の一般人を謎の技術で完璧に治療して、白い空間に閉じ込める番組なんて、倫理的にもあっていいはずがない。


正誤は置いておき、とりあえず現状の整理は出来たので、

俺は脊髄での会話をやめて、少女にある事を聞くことにした。


「で俺そこで何すればいいの?」


そう、俺は異世界で具体的に何をすればいいのか。

行ってもらうと言われただけで、そこでの目標は聞かされていない。


「君には異世界にいる『虚骸魔ルインド』を全て倒してきてほしい。

虚骸魔ルインド』は非常に強力なモンスターで、ほぼ人間のような見た目で言葉を喋る。

過去に何人もの強者が挑んだが、全員6匹いる中の1匹目に敗れた。」


果たして正気なのだろうか。

どうやら俺は死にたがりか何かかと思われているらしい。


強者が敗れるようなモンスターを、ただの高校生が倒せるわけがないのは、

多分そのモンスターでも分かる。


「辞退して元の世界に帰れたりってする?」


「仮に帰れたとしても、死体の状態そのままで生き返らせる事しか出来ない。

例えば、君の死体の損傷が激しかった場合、事故直後の感覚を経て死に、またここに戻ってくるだろう。

それでもいいのなら、生き返らせる事自体は出来る。」


正直一考の余地はあったが、事故直後の感覚、そしてここに戻ってくる可能性があるというのが引っかかる。

あのぼぉっとした、知能が低下していくような感覚を味わうのは正直二度とごめんなので、素直に転生することに決めた。


「全快で生き返れないんなら別にいいかな。

 ただ俺そこらへん歩いてたら死んだだけで、戦闘経験なんてないんだけど。」


「大丈夫、スキルが何とかしてくれるさ。」


少女はにこりと笑いかけたが、こちらとしてもまだかなり不安が残る。

第一そのスキルが最高峰のものだったとして、使いこなせなければ豚に真珠。

俺がその虚骸魔ルインドとやらを倒すには、『異世界に出た瞬間に虚骸魔ルインドが全員死ぬ』くらいのスキルがないと無理だろう。


それに『スキル』と言ったって、俺の思っているようなものではない可能性がある。

俺はRPGによくあるような、固有の能力のようなものを想像しているが、

もしこれが手法のような意味を持ち、

極端な話『お前のスキルは飯を食うスキルだ。』などと言われ、飯を食う以外を出来ない体にされてしまったら、

多分俺はその場でショック死するだろう。


「というわけで今から君にピッタリなスキルを授けよう。」


「アい。」


緊張と不安により、すごく間の抜けた返事をしてしまった。

一体どんなスキルを貰えるのだろうか。


「君のスキルは


『指鉄砲でモンスターにピンを刺し、自身を超強化することが出来るスキル』だ。」


良かった、ちゃんと俺が思っていたような『スキル』だった。

それに肝心のスキル本体も強そうだ。

このスキルならモンスター相手でも無双もしくは善戦出来るんじゃないか。



「ただしピンを刺したモンスターを3分以内に倒せないと、君は死ぬ。」



だが話はそれほど甘くはなかった。

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