3、エンビー
日野先生の後ろをついて行って1階の一室の前で止まった。
「ここが理事長よ。」
そう言って先生はドアをノックした。
「理事長、SMWのモンスターにエラー発生しました。入室許可をください。」
「入りたまえ。」
聞こえてきた声は低く重みのあるように聞こえた。
「失礼します。」
「失礼します。」
先生に続き僕も理事長室へ入る。
顔を上げると50代前半くらいにみえる男の人が椅子に座りどっしりと構えていた。
「それでどのようなエラーが発生したんだ。」
「はい。MEを展開後召喚された新入生の卵が孵化しないというエラーが発生しました。」
「…そうか。こちらで対処しておく。わざわざきてもらってすまなかったね。」
理事長はそう言うと立ち上がり僕の前まで来た。
「君にも迷惑をかけたな。こんなこというのは指導者として変だが1度しかない高校生活、勉強、運動、学生として大切なものはあるが時にはバカやって青春を桜花してほしい。入学おめでとう。」
たしかに教育者としてはすこし変な言葉かもしれない。
けどその一言を聞き僕はとても嬉しくなった。
「羽柴君は先に教室へ戻っててください。私は1度職員室によってから行きます。」
日野先生はそう言って僕を先に教室へ戻させた。
***
教室へ戻るとクラスメイトたちはまた雑談をしていた。
僕は自分の席へ戻るとすぐに道成が声をかけてくれた。
「犬海、どうなんだ?まだ卵のままだけどエラー直りそうなのか?」
「たぶん。理事長は対処してくれるって言ってたけど…」
そう言って自分の卵へ目を向ける。
やはりヒビはなくパートナーが出てくる気配はなかった。
「道成のパートナーは職業持ちらしいね。どんな職業かわかるの?」
「あぁ、どうやら戦士らしい。男って感じの職業で俺は好きだぜ!」
「戦士かぁ、道成らしくていいね。操作はどんな感じでするの?」
「頭の中で思ったら操作される感じだなぁ。なんか変な感じだ。しかもなかなか思い通りに動いてくれないんだよなぁ。」
道也は手を伸ばして操作しようとする。
だが右手と右足が同時に出て右に倒れてしまった。
「コントロールオフ。」
道也がそういうと倒れてた道也のパートナーは起き上がった。
「ことり姉に色々聞いててよかったぜ。コントロールをオン、オフできることなんて説明会のときに聞かないとわからないぜ。」
入学前の春休み、僕達は姉さんに呼び出されSMWの話を聞かされていた。
姉さんは僕たちに何かを期待しているような感じだった。
それが何かはわからないけどあの時の姉さんの顔は楽しそうな、けど険しいように感じた。
「クラスのみんなはパートナーと戯れてる感じだね。僕も早くパートナーに会いたいなぁ。」
「パートナーが出てきたら休み時間特訓しようぜ!そんで色んな行事で優勝目指そうな!」
この学校ではSMOを取り入れた行事が沢山ある。その度に個人戦やチーム戦のトーナメント式の大会が開かれる。
優勝者にはパートナーのレベルが大幅にあがったりする特典に遊園地のチケットなど嬉しい賞品がある。
「もちろん!」
ガラガラガラ
「皆さん、席についてください。」
日野先生が帰ってきてクラスメイトはそれぞれの席についた。
「今日は以上となります。明日から学校のことSMWのことなど沢山話すことがあります。遅刻しないように来てくださいね。」
そしてホームルームが終わり帰りの支度をしていると道也が声をかけてきた。
「どうする?帰るか?俺は今からゲーセン行くけど。」
「僕は家に帰るよ。今日、晩御飯の当番なんだ。」
「おっけー、じゃまた明日な。」
そう言って道也は教室を出た。
後ろをついて行くパートナーをみると羨ましいと思ってしまう自分がいた。
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