2、エラー

「入学式まじ眠かったぜ。」

「眠かったじゃなくて寝てたけどねー。」


入学式が終わり僕達は教室へ戻ってきた。

クラスのみんなも席が近い人と話したりしていた。

そんな中、僕は1人の女の子を見ていた。

橘香織、新入生代表として挨拶していた子だ。

橘さんは前の席の女の子ととても楽しそうに話しをしていた。


(同じ中学だったのかな?)


「おーい、犬海。どこ見てんだよー。」

「うわ!なにさ!」

「いや、ぼーってしてるから。っと先生がきたな。」

「皆さん、改めて入学おめでとうございます。まず皆さんが待ちに待ってるであろうSMWのパートナーについてですが…」


SMW(スクールモンスターウォー)、それはこの学校だけの特別授業。

この学校内に展開するME《モンスターエリア》に入ると1人1体モンスターがパートナーとして現れる。

パートナーは入学試験でランクが決まり入試で点数が高ければ高いほど高ランクのパートナーになる。

また中間、期末テストの成績に応じてスキルが手に入ったり進化する。

そしてパートナーと組み決闘を挑むことができる。

月に1度だけ1人に決闘権があり揉め事等はこの決闘でケリをつけたりする。

申し込まれる側は決闘権は無くならないが使い時が肝心だと姉ちゃんが言っていた。

学校側の設定でパートナーのON、OFFができるので今日みたいな大事な行事には現れない。

だから今日は1日もモンスターを見てないわけだ。


「11時になるとMEをONにします。そのとき皆さんのパートナーが現れます。」


11時まであと5分、みんなそわそわしているな。

入学試験はけっこう問題が解けた。

高ランクのモンスターが来る自信がある。

道成だって一緒に姉ちゃんにしごかれている。だからきっと高ランクに違いない。

色々考えているとチャイムがなり放送が始まった。


『11時になりました。MEをONにします。』


すると辺りがキラキラと光りだし神秘的な空間が広がり始めた。

窓から外をみるとグラウンド全体も同じよにMEが広がっていくのが


「「「おおおぉ!!!」」」


クラス全体、そして隣のクラスからも大きな歓声が聞こえた。

そしてそれぞれ自分の席の上に卵が現れた。


「すげぇ、卵が揺れだしたぜ!」


後ろの席から道成の声が聞こえ僕も自分の卵を凝視する。

が、僕の卵は揺れていなかった。みんなの卵は揺れているのに僕の卵だけ揺れていない。


「おぉ、生まれるのか!」


道成がそういうとクラスメイトみんなの卵があたたかい光に包まれだした。


ポン!と可愛らしい音をたてみんな机の上にパートナーが現れた。


しかし、


「なんで…僕の卵だけ…」


僕の卵はヒビも入らず、パートナーが現れなかった。

後ろを振り返り道成の机の上をみるとそこにはパートナーらしきものがいた。


「おい、見ろよ!あいつ職業ジョブ持ちだぜ!」


クラスメイトの1人が道成のパートナーを指さして言った。

基本パートナーはモンスター、獣のような姿をしているが低確率で職業持ちという2頭身くらいの人型パートナーが現れる。

職業持ちの凄いところは戦士や魔法使い、僧侶と職業は決まっているがそれぞれが得意とすることが分かっており最初からステータスが高く、成績に応じて武器、防具が進化していくし、人型なので操作もモンスターよりしやすい。


「あの人もそうよ!」


もう1人職業持ちがいると聞こえてそちらに目をむけると視線の先には橘香織さんだった。


彼女は表情を変えずパートナーと向き合っているだけだった。


僕のパートナーはまだヒビも入らず卵のまま。

その焦りが不安に変わってきて気づいたら手をあげていた。


「先生!僕のパートナーが卵のまま孵化しません!」


すると騒がしかった教室内が一瞬静まりすぐザワつきだした。


「卵のままって。」

「卵がパートナーなんじゃね?」


聞こえてくるのは僕の卵のこと。

するとすぐに先生が


「それはたぶんエラーですね。羽柴君は私と一緒に理事長室へ行きましょう。」


そしてすぐ先生は教室の外へ出た。

少しだけホッとしたがまだ心の底では不安が残ったまま僕は先生について行った。



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