School Monster War

空海月 ヤネン

1、エントリー

「はぁ、はぁ、入学初日から遅刻なんてしたらさすがにやばいよぉ!」


そう言って上り坂を全力で駆け上がっているのは僕、羽柴犬海はしば けんかい

今日から私立紋富高校へ通い始める高校1年生。

家は学校のすぐ隣なのだが100mほどある坂を1度下ってそしてまた上がっていかなければならなかった。今まさに遅刻寸前の僕にその上り坂という壁があった。


「よう、犬海!初日から遅刻しかけてるなんてやるなぁ!」

必死で走っている僕の隣に現れたのは親友の針道也はり みちや

小学生の頃からの付き合いでいっぱい遊んでいっぱい喧嘩もした心許せる親友だ。

すこしやんちゃなところもあるが根は優しい良い奴だ。


「そういう道也こそ全力疾走じゃん!いつも僕のこと言うけど道也もそこそこだよ!」


そんな感じでいつもと同じようなやり取りをしながらあっという間に学校に到着。


「犬海!道也!遅いぞ!入学式に遅刻しかけるとはお前たちは何をやってる!」

「「ひぃぃいい!」」


いきなり怒られ僕らは驚き固まってしまった。

声の主のほうへ振り向くとそこには僕の姉、羽柴小鳥はしばことりがいた。

姉は同じ紋富高校に通う3年生しかもで生徒会長を務めてる。

姉は僕と違い文武両道、大抵のことならなんでもできる優等生だ。

僕と道也は小さい頃から姉に遊んでもらい、勉強も教えてくれたりと色々お世話になっている。


「全く、高校生になったからと気が緩んでいる!お前たちはE組だ!早く行け!」

「「はい!」」


僕達は背筋を伸ばし大きな声で返事をして急いで教室へ向かった。


「ここが僕たちの教室かぁ、道也!高校生活でも一緒にバカやろうね!」

「たりめーよ!さぁ、行こうぜ!」


ガラガラガラ


勢いよく扉を開け、僕達は教室の中へ入った。

先生らしき人は見当たらなかったが黒板を見ると『入学おめでとう!』と大きく書かれていてその隣に座席表があった。


「僕の席は…」

「真ん中の後ろの方だな、また犬海の後ろか。楽しくなりそうだな。」

「ははは、もう後ろから輪ゴム飛ばしてぶつけるのやめてよね。」


僕達は中学3年のときも同じクラスだった。

卒業する前も道也が後ろの席で色々イタズラされたのを忘れはしない。


「ま、集合予定時刻の2分前に着いたんだ。しばらく席でゆっくり待とうぜ。」

「2分じゃカップ麺も作れないほど時間ないけどね…」


ガラガラガラ


扉が開く音がして振り向くと若い女の人が教室に入ってきた。

顔だけ見ると同級生かと思ってしまうが制服ではなくスーツ姿だからきっと先生だろうな。


「みなさん、席に着いてください。」


教室内が静かになりみんなが席に着いた。


「私はこのクラスの担任の日野ほのかです。今から入学式の説明をします。」


べつにただの入学式だからこれといってなにもないだろうと思い流すように聞いていると、


「新入生代表で橘香織たちばな かおりさんは壇上へ上がって答辞をお願いします。」

「はい。」


答えた生徒の方を向くとそこには黒髪ロングの女の子だった。

いかにも優等生といった感じの子で綺麗な顔つき、スタイルも細くモデルみたいだった。


「それでは体育館に移動します。」


体育館へ移動してしばらくすると入学式が始まった。適当に聞いてれば終わるだろうと思い軽く流して聞いてると


「…新入生代表、橘香織!」

先程の女の子が名前を呼ばれ席を立とステージへと向かった。

背筋がまっすぐ伸びてて歩き方とても綺麗でつい見とれてしまっていた。


「新緑が日にあざやかに映る季節となるなか…」

壇上で読み始めた彼女はすごく綺麗で透き通るような声だった。



そして僕は彼女のことをもっと知りたいと思うようになっていく。



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